天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「な、舐めるな!」

手刀をつくると、九鬼は左手で、刹那の肩口を切り裂いた。

「無駄と言ってるじゃない」

虚しく肩口をすり抜ける手刀。

刹那が力を込めると、再び激痛が走った。

「うわっ!」

顔をしかめる九鬼。

「このまま、折りましょうか?」

悪戯っぽく笑う刹那の顔を間近で見て、九鬼は怒りを爆発させた。

「舐めるな!」

九鬼の叫びに呼応して、乙女シルバーの全身が輝いた。

「クッ!」

思わず腕を離した刹那。

その瞬間、九鬼は後方にジャンプすると、着地と同時に土を蹴った。

「ルナティックキック零式!」

空中で足を揃え、インパクトの瞬間に、足を突きだした。

「無駄よ」

刹那は逃げることなく、両手を広げた。

九鬼の蹴りは、刹那の体をすり抜け、 後ろに着地した。

「どうしてだ?」

九鬼は素早く、刹那に体を向けると、構えながら考えた。

「やつは、あたしに掴んだ。なのに、あたしは」


「フフフ…」

刹那は振り向いた。

「すべてが無駄。考えることも無駄。あなたは、あたしに触れられない」


「クソ!」

九鬼は、刹那を睨み付け、

「だったら!」

九鬼は腕を十字に組んだ。

すると、手のひらに2つの光の円盤ができた。

「乙女ソーサー!」

クロスの形から、腕を横に振るうと、回転する光のリングが、刹那に向かって飛んでいく。

重力を無視したような無軌道な動きが、軌道を読ませない。

向かってくるリングを見た瞬間、刹那は軽く舌打ちした。

「これなら、どうだ」

九鬼は、二発目のリングを作っていた。


「だから…言ったでしょ?無駄だって」

刹那は肩をすくめて見せた。

すると、刹那の着ている学生服が真ん中から裂けた。

服だけではない。

白い肌も裂けると、巨大な口が、体の真ん中に現れた。

「ご苦労様」

口が開くと同時に、風が起こり…光のリングはその中に吸い込まれていった。
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