天空のエトランゼ〜赤の王編〜
人に当てられたことが、アマテラスのプライドを傷付けた。

怒りに燃えるアマテラスと逆に、九鬼は冷静になっていた。

(まさか…)

距離をとるために、後ろにジャンプした九鬼は、月を見上げた。

「月…」

闇を照らす月。

闇を照らす…光。

九鬼は、自らの拳を見つめた。

ムーンエナジーに包まれた拳を見て、九鬼ははっとした。



「成る程…」

アルテミアは、腕を組んだ。

「月の力に、そんな効力があったのか」


昔…アルテミアが戦った時も、当てることのできないアマテラスに苦戦した。

しかし、空間を切り裂けるライトニングソードを使い、斬ることができた。

「斬るだけでは…アマテラスを無力化することはできた。しかし、月の光ならば…」

アルテミアは白い乙女ケースを、どこからか取り出し、 にやりと笑った。

「もう…終わりだな」




「はあ〜!」

九鬼は、全身に気を巡らせた。

すると、ムーンエナジーが全身を包んだ。

「く!」

アマテラスはその様子を見て、一歩だけ後退りした。


九鬼の脳裏に、加奈子の言葉がよみがえる。

神を殺す力。


乙女ブラックの時とは比べ物にならない程の力と、光が宿る。

九鬼はゆっくりと、右手をアマテラスに向けた。人差し指で、指差す。

「お前は、人間を虫けらと言ったな」

アマテラスを睨みながら、人差し指以外の指を突きだし、手刀をつくる。

「ならば!」

手刀が、月の光で輝いた。本物の刃物以上に。

「虫けらの力を見せてやる!」

ゆっくりと深呼吸をした後、

「参る!」

突然、九鬼の姿が消えた。

「こ、こんなところで!」

アマテラスは、消えた九鬼を探す。

「折角!ここまで、復活したのに!」

逃げようとするアマテラスの耳元に、声がした。

「死ね」

低く殺気のこもった声とともに、光が走ると、

「ぎゃああ!」

アマテラスの左腕が、切り裂かれ…宙に舞った。
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