天空のエトランゼ〜赤の王編〜
突き刺した相手の肉を喰らい、能力をコピーするピュアハート。

最初は、その能力を使っていたが、次第に使わなくなっていた。

(剣の力ではなく、己の力で…強くなりたい)

大月学園での日々が、カレンにそう思わせていた。

カレンはピュアハートを一回転させ、胸のペンダントに差し込むと、ゆっくりと歩き出した。

(人間は…まだまだ強くなる。こんなところで終わらない)

しかし、身体的能力で人間を上回る魔物達。彼らと比べれば…人間は、下等動物なのだろうか。

魔物よりも劣る生物なのだろうか。

(違う)

カレンにはわかっていた。

人間は、未熟で弱く…魔物よりも劣るけども、鍛え方次第ではどこまでも強くなると。

そして、人間は…肉体よりも精神を鍛えることもできると。

(だけど…アステカ王国のように、偏ってはいけない)

すべては、バランスよくしなければならない。

(そういう意味では、人間は未完成ではあるが…己次第でどうとでもなる存在なんだな)

そう…努力次第なのだ。

人間は誰でも、無限の可能性がある。しかし、それを捨てる自由もあるのだ。

(だとしたら…滅んでも己のせいだ)

そう思いながらも、カレンはそうならない確信を持っていた。

それは…しぶとい人間を知っているからだ。

(人間は、他の生物と違い…進化も退化も、己で経験できる)

歳いくことが、退化ならば…彼女の師匠のジャスティン・ゲイはどうなる。

(あたしは、前を進む!)

例え…間違っていても、前は前だ。

進化…退化。肉体の優劣でもない。勝ち負けを越えたもの。

心が折れなければ…人間は負けない。

肉体が破壊され、死ぬことがあっても…。

そんな風に思う生物が、いるだろうか。

カレンは修行を続けながら、感じていた。

人間の心の弱さ。心の強さの大切さを。

(あたしは…)

カレンは自らの進むべき道を、朧気ながら見つけかけていた。
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