天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「虫けら以下だと!」

鬼の形相で、アマテラスは足を上げると、再び力を込めて、踏みつけた。

九鬼の身を包む乙女スーツにヒビが走った。

「人程の虫けらは、いない!」

アマテラスは、ヒビにかかとを押し付けた。

「我が、先程まで利用していた人間は!自らが人間である為に、他の人間から体を奪って生きてきた!」

他のアマテラスが、順番に口を開いていく。

「亜空間に飛び込められていた我と!」

「子宮の中で、殺されようとしている胎児と空間がなぜか…繋がった!」

「あの女が、生きたい!産まれたいという意志が、我を呼び寄せたのだ!物言えぬ子宮の中でな!」

「しかし、まだ肉体が形成されていなかった為!」

「人として、産まれる為には!」

「肉体が必要だった!」

「だからこそ!」

「我々は、胎児を殺そうとした医師と、その場にいた看護婦の肉体を頂いた!そして!」

アマテラスの1人が、九鬼に顔を近づけた。

「この顔だがな」

アマテラスはにやりと笑った。

「やつを殺そうとした母親の顔をモチーフにしている!」

「滑稽だろ?やつは、母親の顔を!自分を殺そうとした女の顔で、生きてきたのだからな!」

「き、貴様!」

九鬼の戦闘服の全身に、ヒビが走った。

「お笑いだろ?」

「だけど!あの女は、知らない!本当は、母親がこいつを産まそうとしていたことを!しかし、母体が弱かった為!子供を産めば、自分が死ぬかもしれない!」

「しかし!母親は、自分の命よりも、子供を取ろうとした!だがな!周囲が反対した!」

「だから!母親を騙して!殺そうとしたのさ!」

「その人々の殺意を、胎児は知った!」

「だから!生きたいと願った!」

「だから!我は、助けてやった!やつの願いをきき!産ましてやったのだ!」

「まだ成熟していない体で、無理やり!母親の体を引き裂いてな!」

アマテラスは楽しそうに、笑った。

「本当ならば、数ヶ月後には、ちゃんとした肉体で産まれたはずなのにな!」
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