天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「ったく!あんたに比べたら、月とスッポンね!」

新たなる子供をつくる為に、交わった男と女。

行為中、男は別の女を思い、女は別の男の名を叫んでいた。

「…」

呆けたように、唇の端から涎を流す男は…女の言葉など聞いていない。空想の中に、沈んでいた。

「フン」

そんな男から顔をそらすと、女は前を睨んだ。

「まあ〜いいわ。これは使命だから!だけど、愛ではないの」

女は突然、表情を変え、

「だから!嫉妬しないでね!赤星様」

愛しそうに身をくねらせた。

しばらくそうしてから、白けたように女は、無表情になり、歩き出した。

その後を無数の人間もどきが、続く。

まだ涎を垂らしている男を残して。

「いくわよ。我が子達…。みんなに、新しいパパを紹介してあげるわ」

ここで、女は唇の端をつり上げた。

ぞろぞろと全裸で、女の後ろをついて歩く人間もどきの数は、数百。

「行き先は!」

女は前方を指差し、

「あの方が生まれた国よ!」

きゃっと叫んでしなを作った。

数分後。

ずっとぼおっとしていた男は、周りに誰もいないことに気付き…慌ててテレポートした。

行き先は、日本地区。

太平洋島々を襲った衝撃が、日本列島を駆け抜けることになった。

九州北東部から、上陸した人間もどきの大群は、朝鮮半島への連絡口である港町を襲撃した。

しかし、太平洋の島々の時は先手を打たれた防衛軍であるが、各地区に飛ばした式神と、前防衛軍が残した監視衛星が残っていたことも幸いし、魔界以外のあらゆる地域に防衛網を張っていた。

人もどきの出現は、即座に港町に伝えられていた。さらに、旧防衛軍の駐屯地が近くにあった為に、一般人の避難は速やかに行われ、さらに反撃も鮮やかであった。

それなのに…防衛軍は壊滅し、九州地方はあっという間に占拠された。

人間もどき…。

彼らはもう…もどきとは言えなかった。

人間を超え、魔物すらも超えた…新たなる生物となっていた。

いや…生物と言えるのか。
< 1,140 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop