天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「貴様の言う本物とは、何よ!」

向けられた刃の先を睨みながら、女はカイオウに訊いた。

「フン!知れたことよ。自らの意志で行動するもののことよ。貴様らには、個々の意志がない」

「そうかしら?」

「うん?」

不敵に笑った女の表情に、カイオウが眉を寄せた瞬間、後ろから襲いかかるものがいた。

「アルテミア!」

「!」

カイオウは下半身を捻り、剣で飛びかかってきた男を一刀両断で斬り裂いたはずだった。

しかし、空中に浮かび、男は人差し指と親指で刀を掴んでいた。

「がら空きよ!」

体を捻った為に、脇腹をさらすことになったカイオウに、女の拳が迫る。

「フン!」

しかし、瞬きの間に、女は腹から鮮血を噴き上げ、カイオウは女の後ろに移動していた。

「!?」

男は、カイオウがさっきまで立っていた場所に着地した。指先が焼き爛れていた。

「無闇に触らぬことだ」

カイオウは振り返り、男と女に目をやった。

「な、な!?」

女が驚きながら、腹に手をやると、傷口が塞がっていく。しかし、火傷のような水脹れが残っていた。

カイオウは、刀を男の指先からスライドさせて抜くと、神速で移動したのだ。

「お前達!」

女は自分の腹に残った傷口を見つめ、わなわなと震え出すと、カイオウを睨み、

「やれ!」

周りにいる人間もどきに命じた。

ギラとサラの姿をした人間もどきが、手のひらをカイオウに向けた。凄まじい雷撃が、あらゆる方向から放たれた。

「アハハハハ!あたしを傷物にした罰よ!」

女は笑った。

「…」

カイオウは無言で回転すると、剣で空間を斬り裂いた。

雷撃は、空間断層に吸い込まれていく。

その間に地面を蹴り、ジャンプすると、カイオウは人間もどき達の後ろに立ち、背中から斬り裂いて行く。

背中をそらしながら、ギラとサラの姿をした人間もどきは、傷口から発火して、灰になっていく。

「ティアナ様から受け継ぎし、我が剣に一点の曇りもなし」

刀を一振りすると、付着していた血などが取れ、輝きを取り戻した。
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