天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「悲しい女…」

リンネは呟くように言うと、フレアに微笑んだ。

「だけど…幸せなのね」

「!!」

驚くフレア。

そんなフレアの肩に、後ろからアルテミアは手を置くと、

「ここは任せろ!お前は、赤星と一緒に行け!」

前に出た。

「え?」

そして、ピアスを外すと城に向けて投げた。

「行け!赤星!ライのもとへ」

「え、え!」

ピアスは、空中で回転した。

「肉体を呼べ!」

アルテミアはピアスを見ずに、叫んだ。

「で、でも!」

「オウパーツならば大丈夫よ。しばらく、集まることはないわ」

リンネが、話に割って入った。

アルテミアは思わず、リンネを睨んだが、リンネは微笑みを崩さない。

「わ、わかった!」

ピアスは地面につく寸前、砕けた。すると…地面に、オウパーツを腰に着けた学生服姿の僕が立っていた。

「行け!」

アルテミアが、後ろに立つフレアに言った。

フレアは無言で、泣きそうな目で頷くと、2つの回転する物体に戻った。

「アルテミア!」

僕の両手に、トンファータイプになったチェンジ・ザ・ハートが握られた。

「あたしは、こいつをやる!お前は城に行け!」

「だ、だけど!」

僕は、視線をリンネに向けた。

リンネは笑いかけると、ウィンクをした。

「く!」

思わずたじろぐ僕。

この女達に逆らう気は、なかった。

仕方なく…僕は2人に背を向けて、走り出した。

その後ろ姿を見送りながら、リンネは自分を睨むアルテミアに訊いた。

「行かせてよかったの?」

「ああ…」

アルテミアは徐に、構えた。

「ほんとに?」

目を見開いて、驚いて見せるリンネに、アルテミアは悲しげに笑って見せた。

「死んでもなお…守りたいという思い…。自分が真似できるとか思えない」

「!?」

アルテミアの答えに、リンネの息が止まる。

「凄いよ…」

ぽつりと、アルテミアは呟いた。

その瞬間の表情を見て、リンネは悟った。

「そうか…。お前も」

リンネは、アルテミアとフレアの姿が重なった。

(愛を知ったのか)

リンネは、唇を噛み締めた。
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