天空のエトランゼ〜赤の王編〜
怒りを爆発させるアルテミアから、僕は顔をそらし、

「世間の評価なんて…関係ないよ。アルテミアの良さは、僕が知ってるさ」

「あたしの良さ?」

ここで、僕ははっとした。言葉のチョイスを間違った。

「流石は、魔王を倒した勇者様!余裕なお言葉で」

「べ、別に…」

僕は逃げ出したくなかったが、ぐっと我慢した。冷や汗が、流れた。

「そう言えば〜。今、世界で一番かっこいい!一番結婚した〜い男に選ばれたようね」

いつのまにか…アルテミアの手に、人間界の雑誌が握られていた。

(どうやって、手に入れたんだ)

僕の汗は、止まらない。

「あたしなんて!結婚したくない女!死んでほしい女!酒癖が悪い女!顔は綺麗でも、腹黒い女…etc」

次々に、一位に選ばれたものを発表するアルテミアの言葉は止まらない。

(魔界の女王なんだから…仕方ないだろ)

と思っても、口には出さない。

黙り込む僕をいつのまにか口を閉じたアルテミアが、じっと凝視していた。

それに気付き、僕はさらに顔を伏せた。

「あんただけ〜許さない!」

アルテミアの手の中で、雑誌が燃え上がる。

「あたしのファンはいないのか!」

アルテミアが叫んだ時、

「うん?」

近くに妙な気を感じた。

「この気は!」

アルテミアも気付いた。

「ま、まさか!まだ!」

僕達は、気を感じた方に顔を向けた。

「人間もどきが…」

そこまで言って、僕は言葉を止めた。

数メートル先に、人間もどきの男がいた。

いや、人間もどきの男だが…もう男ではなかった。

「アルテミア…御姉様」

化粧をし、しなをつくりながら立っていたのは…女装した人間もどきの男だった。

「あたしは、愛してます」

くねくねと腰を振りながら、アルテミアに向かってくる人間もどきの男。

「ふざけるな!」

アルテミアは、蹴り飛ばした。

一瞬で、空の彼方に消えていく人間もどきの男。

「あはは…よかったね。ファンがいて」

と思わず言ってしまったから、いけなかった。

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