天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「その者の話は、よい」

リンネは、アイリを睨んだ。

「でしたら、最後に…もう1つだけ、ご報告がございます」

何とか心を落ち着かせると、ユウリがリンネの方に頭を下げながら、摺り足で前に出た。

「魔神ダダを討ち取ったのは、その者ではございません!」

リンネの気を引く為に、敢えて声を荒げた。

「その者に、守られているだけの存在のはずの赤ん坊!いや、今はもっと大きくなっているようですが…」

ユウリはここで、一度言葉を切った。

リンネの気を感じなくなっていたからだ。

少し顔を上げると、いつものリンネが玉座にもたれながら、ユウリを見ていた。

「続けよ」

リンネの言葉に、

「は!」

ユウリは再び頭を下げた。

そして、話を続けた。


「赤ん坊だった子供が、一撃で…魔神と魔物達を全滅させた模様!さらに!」

ユウリは少し顔を上げ、

「その子供の手には、今は無きネーナ様の武器であるファイヤクロウが装着されていたそうです」



「成る程…」

少し考え込んだ後、リンネは口許を緩めた。

「なぜ!女神専用の武器が、鍵の手にあるのか…」

首を捻ったユウリに、静かにリンネが話しかけた。

「ファイヤクロウの最後の所有者は、赤星浩一。ネーナ様との戦いの後…あやつが持っていた」


「リンネ様…」

ユウリとアイリは、唖然としてしまった。

リンネが笑っていたのだ。楽しそうに。


「お前達…。この話は、他の騎士団長の耳にも入っているのか?」


「いえ…まだでございます」

「タダは、炎の騎士団所属故」


「そうか」

リンネは玉座から立ち上がった。

「ならば、この話はしばしここで止めておけ!」

リンネの命令に、リンネとアイリは頭を下げた。


「は!」






報告が終え、2人が消えた後、リンネはまた笑っていた。

「そうか…そい言う意味か」

リンネは無理矢理、大笑いした。

「はははは!」

ひとしきり笑った後、再びリンネは玉座に座った。

そして、顔を手のひらで隠し、

「バカな子」

ぽつりと呟いた。
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