天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「な!」

突然の声に驚き、後ろを振り返った2人の目に、手で目を隠した女生徒の姿が映った。

「ば、馬鹿な!」

気配を感じさせずに、後ろを取られたことよりも…炎の魔神である2人が凍る程の冷気の中にいることに、驚いていた。

「どうしたの?阿藤さん」

驚いている女生徒のそばに、九鬼が駆け寄った。

「は、裸!」

女生徒は、美亜だった。

美亜は顔を真っ赤にしながら、ユウリとアイリを指差していた。

「え?」

九鬼も驚き、美亜の指差す方を見た。

全裸のユウリとアイリがいた。

「どういうことだ…」

ユウリとアイリの意識はもう…美亜達に向いてなかった。

「冷気が消えた」

2人の肌から、ひび割れが消えていた。


「裸だって!」

「ええ!まじかよ!」

美亜の悲鳴を聞きつけて、男子生徒達が教室から飛び出し、廊下を走ってくる。


「裸?」

ユウリとアイリは、自らの様子を確かめて、

「別に問題ない」

と頷き合った。


「誰の裸だ!」

「ま、まさか!転校生の!」

廊下の角を目指して、全力で走る男達の前に、九鬼が立ちはだかった。

「ここからは、立ち入り禁止だ」

腕を組んで、睨みを効かした九鬼に、生徒はたじろぎ、足を止めた。

それでも、スケベ心が九鬼の眼力を超えた男子生徒が、首を伸ばして、角の向こうを見た。


「何の意味があるのだ?」

「さあな」

全身にカーテンを巻き付けたユウリとアイリがいた。

「えええ―!」

男子生徒は思わず、肩を落とした。

状況を判断した九鬼が、一瞬でそばの教室に入り、窓の横に束ねてあったカーテンを取り、2人に巻き付けたのだ。

「はい!向こうに行ってください!」

九鬼は、その場で崩れ落ちている男子生徒の首根っこを掴むと、移動させた。

ちょうどタイミング良く、チャイムが校内に鳴り響いた。
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