天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「何の騒ぎですか!さっさと教室に戻りなさい!」

チャイムが鳴り響く中、教師の怒声も響いていた。

赤星は足を止め、教室に戻っていく生徒達の様子を眺めていた。

男子生徒の中、1人歩いていく女生徒の姿が目に止まった。

いや、偶然…目に入った訳ではなかった。

目が…いや、運命が…浩也を導くように、その女生徒をとらえたのだ。

(!?)

女生徒も、浩也を見ていた。

絡まる視線。

ほんの数秒だが、浩也にとても長く感じられた。

(誰…!?)

知らない人だった。

なのに、知ってるような気がした。

忘れたくても、忘れられない程の人に思えた。

なのに…浩也は知らなかった。

(どうして?)

知ってるはずだ。

記憶を手繰ろうとした時、浩也の脳裏にまた…あの画面がフラッシュバックした。


六枚の翼を広げ、黄金の鎧を身に纏った女の人が、悲しげな表情を浮かべている。

(なのに…僕は、その女の人を突き刺した!)

と思ってから、浩也はその記憶を否定した。


(僕じゃない!それに!)


今、浩也の目の前を通り過ぎた女生徒と、髪の色も背丈も違った。

(眼鏡もかけてなかった)

浩也は頭を、思い切り横に振った。


「赤星君」

教師の呼ぶ声が、浩也を正気に戻した。

「あっ、はい」

顔を上げ、教師に返事を返した。

「教室に向かいましょうか」

再び教師に促され、浩也は歩き出した。

その後ろを、ユウリとアイリが距離を開けて歩く。


「あれは…」

「赤の王」

ユウリとアイリは、前を歩く浩也の背中を軽く睨んだ。

「!?」

廊下の角から、飛び出した九鬼が舌打ちすると、ユウリとアイリの後ろを歩き出す。

(まったく…気配がしない)

改めて、ユウリとアイリの気を探った九鬼は、その底知れぬ力を感じ取り、拳を握り締めた。

(それでも…あたしは!)

ユウリとアイリに気を取られた為、九鬼は気づかなかった。

浩也と美亜が前にいることに。
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