天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「もう邪魔くさい!」

カレンは、浩也の左右の頬っぺたをつねると、

「おばさんも!お姉さんもいい!カレンと呼び捨てにしろ!もしくは、山本さんだ!」

「じゃあ、カレンで」

浩也は即答した。つねられていても、笑顔を崩すことはなかった。

「呼び捨てか!」

カレンは捻りを加えて、浩也の頬っぺたから手を離した。

「まったく!」

カレンは、頬っぺたが赤くなっている浩也を見つめ、

「こんなやつが…あんなに強いなんて、あり得ないだろう」

腕を組んだ。

浩也は苦笑し、

「僕は…そんなに強くないですよ。お母様の方が絶対、強いし…それに…」

浩也の脳裏に、ある女性が浮かんだ。

後ろ姿しか見えない。

綺麗なブロンドの髪に、槍を持った…女。

(誰!?)

その女の姿が浮かんだ瞬間、浩也は激しい頭痛に襲われた。

「クッ!」

顔をしかめ、突然踞る浩也に、カレンと九鬼は驚いた。

「ど、どうした!大丈夫か」

カレンは腰を下ろし、踞った浩也の顔を覗き込んだ。

「医務室に運びましょうか?」

浩也の様子を見て、九鬼もしゃがみ、浩也の肩を担ごうとした。

その瞬間、校内にアナウンスが響き渡った。

「いぇ〜い!みんな元気かな!大月学園のスター中西剛史だぜ!」

「な、何だ?」

カレンは顔を上げた。

ボリュームを最大にしているのか…少し音が割れていた。


「今日は、みんなのスターから〜たった1人のマイ!スウィ〜トエンジェルへの伝言だ!すまないなあ〜!」

と言ったら、咳払いをし、

「マイスウィ〜トエンジェル!九鬼真弓!お前の大切なものを預かっている!だ・か・ら!俺の胸の中まで、取りにこい!学園の真ん中で、愛を叫んで、待ってるぜえっと!」

最後に叫んで、放送は終わった。


カレンは、九鬼をに顔を向けた。

「今の馬鹿は知り合いか?」

少し軽蔑したような目を向けられたが、少し青ざめている九鬼は、

「いえ…」

としかこたえなかった。

「うん?」

カレンは首を捻った。

「別に大したことじゃないから…。ごめん。赤星君をお願いします」


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