天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「どうした?」

大月学園から遠く離れた場所。

実世界でいう朝鮮半島の38度線付近にある魔界への入り口に、ギラが立っていた。

前方には、解体したはずの防衛軍の残党が、結界を守る為に陣を構えていた。


本気になれば、そんな結界…破壊することなど容易いだが、ギラにはそんな気はなかった。

命令なく、無闇に人を殺したり、破壊したりはしない。

それが、ギラの信条だった。

そんなことをすれば、人間と同じになる。

食べる為でなく、自らの欲望を満たす為に、動物を殺すことも簡単にする人間を、軽蔑していた。

しかし、人間がそんな者ばかりではないと、ギラは知っていた。

「遅かったな」

ギラは後ろを振り向くことなく、テレポートアウトした仲間に話かけた。


「仕方あるまいて…そんな簡単な相手ではないのでな」

ギラの隣で立ち止まったのは、サラだった。


「…で、どうだった?」

視線を結界に向けたままできいたギラに、サラはこたえた。

「予想通りだ」

サラも、結界を見つめた。

「そうか…」

しばし、無言で過ごした後、徐にギラが口を開いた。

「俺も行けばよかったか?」

「お前…。殺すぞ」

サラの抑えた怒声に、ギラはフッと笑った。


「悪かったな」


ギラの隣に立つサラの残っていた角も、折れていた。

珍しく傷だらけのサラを、ギラは綺麗だと思うだろう。

だから、見ることはしなかった。

そう思うことも、侮辱にあたるからだ。

2人はただ…立ち続けていた。
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