天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「派手にやったな」

薙ぎ倒された木々が、丸太の絨毯のようになった空間に、ティフィンはいた。

ほとんどの丸太が、炭になっており…少しの風で、崩れてしまう。

そんな炭の隙間から、ティフィンは一枚の割れたカードを見つけた。

炭で黒くなったのかと思ったが、違った。

もともとカードは、黒かったのだ。

しかし、焼け焦げてはいなかったが、真っ二つに割れていた。

「こりゃあ〜使えないな」

ティフィンは、自分の顔よりも大きなカードを持ち上げようとしたが、止めた。

「…で、どうするんだ!」

ティフィンは振り返り、炭の山に横たわる男にきいた。

「いりませんよ。若き日の思い出の品ですが…もう必要なりなくましたから」

顔を真っ黒にしながら、仰向けになり、空を見上げている男は…ジャスティン・ゲイだった。

「大丈夫か?生きてるよな」

心配そうに、上からジャスティンの顔を覗き込むティフィンに、ジャスティンは苦笑した。

「勿論」

「でも、騎士団長とやりあったんだろ?それで、五体満足のはずが…」

「大丈夫ですよ。クリーンヒットは、一発しか貰っていないですから」

「一発って!騎士団長だぞ!人なら、粉々になるはずだ!」

声をあらげるティフィンに、ジャスティンはさらに笑った。

「だから…カードは、割れましたよ」


サラとの戦いで、すぐにブラックカードを使い、黒い結界を身に纏い…digシステムを発動させた。

しかし、サラの雷撃で…結界が破壊されたのだ。

たった一発の攻撃で。

digシステムとは、素手を基本としたジャスティンの戦い方に、防御の必要性をなくした…画期的なものであった。

結界が、攻撃を防いでくれるからだ。

しかし、ジャスティンは防御の必要性を痛感した。

digシステムを破壊され、生身になった方が戦えたのだ。

先祖達が作り上げた格闘術には、防御もまた…型として組み込まれていたのだ。
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