天空のエトランゼ〜赤の王編〜
素手で、騎士団長と戦うなど無謀だと言われようが…最初の一撃以外、死に至る程の攻撃を受けることはなかった。

(俺も…まだまだだ)

ジャスティンは、右手を天に向けた。

血だらけの右手は、折れてはいなかったが、肉がもげていた。

なぜならば、この手の手刀で…サラの角を叩き折ったのだ。

しばし、血だらけの手を見つめていると…ティフィンが飛んできて、手を当てた。

妖精であるティフィンは、戦闘力は低かったが、治癒能力に長けていた。

治っていく手を見ながら、ジャスティンはティフィンに言った。

「日本にいけ」

「え?」

治癒の手を止めずに、ティフィンがきいた。

「日本には、赤星君がいる」

「あ、赤星が!」

ティフィンは思わず、治癒の手を止めた。

「君の知る赤星君とは…少し違うかもしれないが、紛れもなく彼だ」

「少し違う?」

ティフィンは首を傾げた。

「会えばわかる!しかし、君は…赤星君に会いたいだろ?」

「そ、そんなことは!」

焦って、顔を逸らすティフィン。

「彼は…多分…いろんなパーツが欠けている。君と会えば、また一つ欠けている部分が消えるかもしれない」

「だけど!赤星は、魔王と戦って…」

「君の仲間であったフレアも、彼の欠けた部分を補ってくれた」

「フ、フレアって!噂は、本当だったのか!魔王復活の鍵を握った赤ん坊を抱いて、逃げているって!」

思わず興奮するティフィンに、ジャスティンは微笑んだ。

「その赤ん坊が、赤星君だ」

「ええ!」

「詳しいことはわからない!だから、会ってみてくれ。赤星君がいる学校には、俺の弟子もいるから」

ジャスティンは、治りかえている手で、ティフィンの頭を撫でた。

「頼んだぞ」


「ジャスティン…お前は、どうするんだ?」

「俺は…」

ジャスティンは空を見つめ、

「修行をやり直す」

頷いた。

「さらに、強くなる為に」
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