天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「その美しいさは!凡人には理解できない!」

中西はゆっくりと手を前に差し出し、

「さあ…来い!」

力強く言った後、中西も中庭から飛び出すことになった。

生徒達の視線を背中に浴び、前には狼狽える九鬼しかいなくなった時…中西は、にやりと笑った。

そして、小声でこう呟いた。

「デスペラードよ」




「うっ!」

動揺している九鬼には、中西の最後の言葉が聞こえなかった。

後ずさる足が、グラウンドの土を踏んだ瞬間、九鬼は唇を噛み締めて、前を睨んだ。

一呼吸置くと、中西に向かって叫んだ。

「返して貰えますか!あたしの大切なものを!」

「大切なもの?」

中西は、首を傾げた。

「どぼけないで下さい!あたしの大切な…」

九鬼は口をつむんだ。

乙女ケースのことは、言えない。

生徒が見てるからだ。

(どうする?)

力ずくで奪うこともできたが、生徒の手前…手荒な真似はしたくない。

心の中で葛藤している九鬼の様子に気付き、中西はああ〜とわざとらしく頷くと、

「ああ〜あれかあ」

学生服の内ポケットに手を入れた。


「きゃあああ!」

その時、校舎から顔を出していた生徒達から悲鳴が上がった。

「何!?」

九鬼は慌てて、後ろを見た。

グラウンドの土が突然盛り上がると、その中から太さニメートルはある巨大な蛇が、飛び出してきた。

「サンドスネーク!?」

校舎内から、声が上がった。

「砂漠地帯にしかない魔物が、どうしてここに!?」

魔物事典を慌てて、めくったがり勉タイプの生徒が、絶句した。

「キィィー!」

サンドスネークは、甲高い…振動波のような音を発すると、一番近くいる九鬼の頭上目掛けて、口を開いた。

蛇というよりも、ウツボに近い口の中には、無数の牙が並んでいた。

「クッ!」

九鬼はサンドスネークの口から目を離すと、中西を見た。

内ポケットから、乙女ケースを取り出した中西は、九鬼を見て…微笑んでいた。

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