天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「え…」

中西の唇の動きで、言葉を読んだ九鬼が驚くよりも速く…廊下の壁が吹っ飛んだ。

先程破壊された壁とは、ちょうど反対側になる。

「きゃああ!」

生徒達の悲鳴の中、九鬼の全身に激痛が走った。

「何!?」

鋭い爪が、脇腹や背中…腹に突き刺さった。

「真弓!」

その様子を見ていたカレンは、走り出した。

校舎の壁を破壊したのは、巨大な鳥の鉤爪だった。

「魔物だあ!」

短時間での魔物の襲来は、廊下にいた生徒達を再びパニックに陥れた。

だが、大月学園は…魔物と戦う戦士も育成していた。

中西の馬鹿騒ぎに見向きもせずに、各教室で待機していた戦士希望の生徒達が、一斉に教室を飛び出し、現場に向かった。

「ご苦労様」

中西は、別校舎から走って来る生徒達に軽く頭を下げた。

「真弓!」

巨大な怪鳥は、九鬼を爪で掴むと、大月学園上空へと飛翔した。

カレンは、中西のそばまで来ると、剥がれた壁から空に浮かぶ怪鳥を見上げた。

「チッ!」

舌打ちした後、カレンは乙女ケースを握っている中西に目をやった。

中西はただ…肩をすくめるだけだ。

「くそ!」

今は相手にしてる場合ではない。

全長十メートルはある翼を広げる怪鳥は、禿鷹に似ていた。

足に掴まれ、爪が食い込んだ九鬼の体から、血が滴り落ちた。

「今!助けるぞ!」

カレンは、制服の胸元を開けると、ペンダントを取り出した。

それについた赤い碑石に触れると、ピュアハートが召喚できる。

カレンが碑石を指で触れようとした瞬間、横合いから蹴りをくらいふっ飛んだ。

「な!」

とっさに肩でカードして、カレンは立ち上がろうとしたが、腕が痺れて立てなかった。

「馬鹿な!」

カレンは唖然とした。

それは、腕のダメージではなく…自分を蹴った人物の姿を見たからだ。

「乙女ブラック!?」

腕を庇いながら、何とか立ち上がったカレンの前に、乙女ブラックがいた。

「ほお〜」

後ろから感心したような声がしたので、振り返ると…乙女ケースを持った中西が、乙女ブラックを見つめていた。

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