天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「何!?」

カレンは、中西の手元を確認した後、前を見た。

一度拳を引いた乙女ブラックが、カレンにパンチを叩き込もうとしていた。

「馬鹿な!」

カレンは回転すると、拳を突きだした腕の肘辺りにつま先を叩き込んだ。

簡単に、変な方向に曲がった乙女ブラックの腕に驚くよりも、カレンは鼻腔を刺激する異臭に顔をしかめた。

「こいつは!?」

蹴り足を着地させると、カレンは後方にジャンプした。

「おっと」

大袈裟に破壊された壁側に避けた中西とすれ違いざま、カレンは横目で中西を見た。

不敵に笑みを漏らす中西は、背中を曲げ…上空に浮かぶ捕まった九鬼を見上げた。

「そろそろ…ナイトの登場かな?」


「何なんだ?」

カレンは、中西から廊下で繰り広げられている戦いに目をやった。

数え切れない乙女ブラックが、生徒達と戦っていた。

「乙女ソルジャーの…ミイラか?」

腕が曲がりながらも、向かってくる乙女ブラックと一瞬で間合いをつめると、カレンはすれ違いざま…眼鏡を取った。

すると、乙女ブラックの変身が解け…ミイラは砂と化した。

「これは!」

カレンは、奪い取った眼鏡を見た。

黒に見えたのは、汚れが染み付いているだけだった。
指で削ると、地の色である灰色のフレームが姿を見せた。

「うん?」

その時、生徒と乙女ブラック達の間に、一陣の風が通り過ぎた。


「何の騒ぎですか?」

風は、カレンの前で止まった。

「浩也!?」

その手に、数多くの眼鏡を持った浩也が、カレンにきいた。

生徒達と対峙していた乙女ブラック達が、ミイラの姿を晒すと、砂と化した。

「お前…こいつらの弱点を…」

浩也の手にある眼鏡を見つめ、驚くカレンに、

「おば…カレンのやったことを見て」

浩也は微笑むと、破壊された壁から上空を見上げた。

「チッ」

一瞬で、乙女ブラック達を排除した浩也を見て、中西は舌打ちした。

「あれか?」

浩也は、空中に浮かぶ怪鳥を睨んだ。

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