天空のエトランゼ〜赤の王編〜
あらゆるものが一瞬で消滅した異空間で、棺とその上に座る少女だけは…無傷で、残っていた。

「やはり…な」

アルテミアはほくそ笑むと、少女に向かって歩き出した。

もう遮るものはない。

「始まりの女神…。この世界で、初めて…自分の父である魔王を殺した女」

アルテミアは、少女を見上げながら、丘を上がっていく。

「そして!魔王から、奪った女!本当ならば…歴代の王に受け継がれるはずだった力!」

アルテミアは丘の途中で、足を止めた。

「その力を貰うぞ!」

ギラリと睨んだアルテミアの瞳が、赤く輝き…さらに魔力が増した。

そんなアルテミアの様子にも、少女は怯むことなく…せせら笑った。

「愚かな小娘!間合いを開けたら、我が能力から逃れられると思ったか!」

今度は、少女の瞳が赤く染まった。

次の瞬間、衝撃波にも似た何かが少女から放射状に放たれた。

「な!」

それは、まったく痛みを感じさせずに、アルテミアの体を通り抜けると、異空間全体に広がった。

「はははは!」

少女の高笑いが、異空間に響いた。

「どんな凄い魔力を持とうが、我の前では無力と化す!なぜ、イオナが自ら我と戦わずに、人間をよこしたかわかるか?」

少女は棺から降りた。

「我の能力の前では、魔力は無となる!それは、魔王でさえもな!」

少女は両手を広げ、

「これが、虚無の女神と言われる我の由来よ」

変身が解けたアルテミアを見下ろし、

「翼を失った天空の女神に、何ができるか?」

さらに嘲ようとした時、突然…アルテミアが視界から消えた。

「何!?」

驚いた少女が天を見上げた時、空中を飛翔するアルテミアがいた。

その体には、翼がないのに…まるで、あるかのように見えた。

空中で回転し、落下してきたアルテミアのかかと落としが、少女の脳天に突き刺さった。

「馬鹿な!」

地面に着地したアルテミアは、即座に土を蹴り、今度は少女の鳩尾に拳を叩き込んだ。
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