天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「…そんなに、変では…でも、少しは…」
まだブツブツと言っている愛川から離れて、浅倉は楽器置き場へと歩いていった。
楽器置き場といっても、部室の隅…アンプの後ろのスペースである。
立て掛けてあるギターケースの中から、赤いケースを手に取ると、中からベースギターを取り出した。
「確かに…ここしばらくは…変が加速してるな」
浅倉はベースをアンプに繋ぐと、弦をつまみ、音を合わせていく。
「それに…あいつが、乙女ブラックっていうのも、イメージが会わない」
「そうですよね!」
突然声をあらげ、愛川は浅倉に近づいた。
「乙女ブラックと言うよりも、主役の乙女レッドの方が似合いますよね!」
目をキラキラされて同意を求める愛川に、浅倉はため息をつき、
「恋は盲目とは、よく言ったものだ」
呆れた。
「誰が!恋ですか!」
今度は怒り出し、
「あたしは…あんなやつのこと!」
顔を真っ赤にしている愛川に、浅倉はまたため息をつくと、
「そんな話はもういい!合わせるぞ」
顎で、一番奥の壁側…真ん中に置かれたドラムセットを示した。
「は、はい!」
愛川はドラムセットに目をやると、何かに気づいたように慌てて、中に入った。
この世界では、音楽は娯楽というよりも…魔物の戦いで、人々を鼓舞する為に発展していった儀式のようなものだった。
人々の心に、弱気と暗い影を生ませないように。
その為に、一番大切なのは…ドラム等のリズム楽器だった。
真後ろから、前線にいる者の背中を押し、勇気づけるのが目的だった。
しかし、近代になるとその役目はなくなり、直接的に戦いに関係する訳ではなく、民衆の心の平常…日常を心落ち着けて生きていけるようにする為の役割を担うものになっていた。
「1、2、3!」
愛川がカウントを刻むと、浅倉がベースを刻み始めた。
それは、曲とは言えないが…力強くしっかりとした骨組みを持っていた。
愛川は音を正確に刻むことで、少し心が落ち着いていくのが…自分でもわかった。
(今は…音に沈もう)
愛川はゆっくりと目を閉じた。
まだブツブツと言っている愛川から離れて、浅倉は楽器置き場へと歩いていった。
楽器置き場といっても、部室の隅…アンプの後ろのスペースである。
立て掛けてあるギターケースの中から、赤いケースを手に取ると、中からベースギターを取り出した。
「確かに…ここしばらくは…変が加速してるな」
浅倉はベースをアンプに繋ぐと、弦をつまみ、音を合わせていく。
「それに…あいつが、乙女ブラックっていうのも、イメージが会わない」
「そうですよね!」
突然声をあらげ、愛川は浅倉に近づいた。
「乙女ブラックと言うよりも、主役の乙女レッドの方が似合いますよね!」
目をキラキラされて同意を求める愛川に、浅倉はため息をつき、
「恋は盲目とは、よく言ったものだ」
呆れた。
「誰が!恋ですか!」
今度は怒り出し、
「あたしは…あんなやつのこと!」
顔を真っ赤にしている愛川に、浅倉はまたため息をつくと、
「そんな話はもういい!合わせるぞ」
顎で、一番奥の壁側…真ん中に置かれたドラムセットを示した。
「は、はい!」
愛川はドラムセットに目をやると、何かに気づいたように慌てて、中に入った。
この世界では、音楽は娯楽というよりも…魔物の戦いで、人々を鼓舞する為に発展していった儀式のようなものだった。
人々の心に、弱気と暗い影を生ませないように。
その為に、一番大切なのは…ドラム等のリズム楽器だった。
真後ろから、前線にいる者の背中を押し、勇気づけるのが目的だった。
しかし、近代になるとその役目はなくなり、直接的に戦いに関係する訳ではなく、民衆の心の平常…日常を心落ち着けて生きていけるようにする為の役割を担うものになっていた。
「1、2、3!」
愛川がカウントを刻むと、浅倉がベースを刻み始めた。
それは、曲とは言えないが…力強くしっかりとした骨組みを持っていた。
愛川は音を正確に刻むことで、少し心が落ち着いていくのが…自分でもわかった。
(今は…音に沈もう)
愛川はゆっくりと目を閉じた。