天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「は!そうだわ!」

カレンの声に、緑ははっとした。

「輝は…どうなったのかしら!」

緑も横を見た。

屋上の一番奥では、情報倶楽部の犬上輝と、浩也の戦いが繰り広げられているはずだったが……。


「え…」

緑は、唖然とした。

「あう〜ん!」

甘えた声を出して、浩也の足にスリスリしている輝がいた。

「犬って…人間に似てるんだね」

笑顔を浮かべながら、カレンを見た浩也に、

「違う…。そいつは、犬じゃない。た、多分…人間」

カレンは否定したが、半分どうでもよくなってきた。

輝は浩也から離れると、仰向けになり、お腹を見せた。

「よしよし」

お腹を撫でてやる浩也。

「あの馬鹿!」

緑は痺れが取れた手で、木刀を拾い上げた。

「敵わない相手と思ったら…すぐに服従するんだから」

トランス状態になると、野生動物の能力を使えるという特殊能力を持つ輝は、この状態の時は、人としての理性を失っている。

変幻した瞬間、浩也の本質を知った輝は…恐怖を通り越して、本能で服従を決めたのだ。

「何してるのよ!この役立たず!もういいわ!もとに、戻りなさい」

緑が木刀を振り上げた瞬間、輝は緑の足首に噛みついた。

「何するのよ!この駄犬!」

「噛んでは駄目だよ。ラッキー」

勝手に名前をつけた浩也が、噛みついた輝を離そうと足を掴んだ。




「何だ…。この状況は」

カレンは、こめみに指を当てた。

乙女グレーの襲撃。そしてら乙女ブラックになれる男。

学園に何かが起こっているのに、こんな茶番劇に付き合ってる場合ではない。

屋上を囲む網にもたれた瞬間、カレンは真下に人がいることに気づいた。

「あれは?」
< 220 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop