天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「俺を騙したのか?」

西校舎裏で、対峙する中西と高坂。

鋭い目付きで、高坂を睨んだ中西は、ただ悠然と立つ高坂に苛立ちを覚えていた。

「真弓が来るからと言われ、ここに来たが…いたのは、お前だけだ。学園の救世主である…この俺を騙すとは、いい度胸ではないか」

軽音部の部室を出た中西の前に、一枚の紙切れが落ちてきた。

その紙には、西校舎裏で待っている…九鬼真弓と書かれてあった。

紙を落としたのは、リンネ尾行前の服部であった。

紙を拾った中西は、ここに来たのだ。


「何の目的だ?」

中西は、高坂の目を見据えた。

その前から、高坂は中西の目だけを見ていた。

「理由を言え!」

少し強い口調になる中西を見て、高坂はフッと笑った。

「何がおかしい?」

中西は眉を寄せた。

高坂は、さらに口元に笑みを作ると、

「おかしい理由は、簡単だ。俺の目の前に、嘘つきがいるからさ」

「嘘つき?」

「そうだ。お前のことだ。生徒達を騙しているのは、お前だ!」

高坂は中西を指差し、

「お前は、乙女ブラックではない!」

「何!?」

「乙女ブラックは、生徒に拳を向けない。それに…」

高坂が目を細め、

「お前は、乙女ブラックに相応しくない。彼女には、どこか気品があった。例え…血にまみれていてもな!」

「ふざけるな!」

中西は制服の内ポケットから、乙女ケースを取りだし、高坂に向けた。

「これでも、そう思うか!」

「ああ…俺の考えは、揺るがない」

高坂は乙女ケースを見ることなく、中西の目から視線を外さない。

「くそ!だったら、その身で味わえ!真実をな」

中西は乙女ケースを突きだした。

「装着!」

乙女ケースが開き、黒い光が放たれると、中西の全身を包んだ。

その姿を見ても、高坂は微動だにしない。

ただ中西を見つめ、

「それに、俺は…嘘をついていない」

「黙れ!」

乙女ブラックになった中西が、高坂に向けてジャンプした。


「高坂先輩!」

その時、西校舎裏に九鬼が飛び込んできた。
< 225 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop