天空のエトランゼ〜赤の王編〜
変動を迎えつつある学園内で、浩也は西館の裏に再び来ていた。

そこで、拾ったものをどうするのか…悩んでいたのであった。

浩也の手にあるのは、黒谷理事長から九鬼に託された乙女ケースであった。

そのケースを握りしめ、じっと見つめていると、後ろから声がした。

「ここにいたのか。探したぞ」

西館内から飛び出してきたのは、カレンだった。

その声に振り返り、浩也はカレンを見た。

「…カレン」

いつもと違う浩也の雰囲気を訝しげに思い、カレンはゆっくりと近付いていった。

「どうした…うん?」

カレンの目は、浩也の手の中にある乙女ケースに気付いた。

「お前。それをどうした?」

「ここで、拾った」

浩也は足元に、目を落とした。

正門に繋がっている東館の裏と違い、西館の裏はほとんど人が来ない為に、雑草が覆い茂っていた。

浩也は地面を見つめたまま、

「このケースには、純粋な力を包みように…邪悪な力を感じます」

ケースをぎゅっと握りしめた浩也に、カレンがきいた。

「邪悪な力?」

「はい……いえ」

一度頷いた後、浩也は首を横に振り、

「ちょっと違うかもしれません」

乙女ケースに目をやった。

「どういう意味だ?」

カレンは眉を寄せた。

浩也は苦笑し、

「邪悪という言葉は…相応しくないかもしれません。人が強くなろうとする欲や、願望…力がほしいという思いが、このケースには詰まっています」

「…」

「だけど…」

浩也は、前を見つめ、

「それが普通なんですよね。この世界を生きる人間には、お金よりも力が必要なんですよね」

そして、カレンに訊いた。

「何よりも、強くなれば…生きれない。だから、強さを欲する!だけど、そんなに強くなければいけないのですか?」

浩也の問いに、カレンは即答した。

「いけないな」

「どうしてです?」

「この世界には、人間を滅ぼせる存在がいる。それは、神ではなく…王だ。そいつは、明確な意志を持って、人間を滅ぼそうとしている」


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