天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「カレン…」

「こういうことは、あたしに訊くもんじゃないな。命をかけるものだから、自分で決めな」

カレンは、浩也に背を向け、

「だけど、どんな答えが出ても…あたしが、最初に受け止めてやるよ」

歩き出した。

(お前と戦うことになってな)


去っていくカレンの後ろ姿を、浩也は黙って見送った。



その頃、中央館と東館をつなぐ渡り廊下を…中西が渡っていた。

「中西!待って!」

その後を追いかける愛川の呼び掛ける声にも、中西は足を止めない。

「中西!」

愛川は全力で走り、中西を何とか渡り廊下の真ん中で、追い越すことができた。

両手を広げ、

「話をきいて!」

通せんぼをする愛川に、速度をゆるめずにぶつかると、中西はそのまま歩き続ける。

「キャ!」

倒れた愛川にも、見向きもしない。

「中西!何があったの!好きな音楽も真剣にやらないで!乙女ブラックになったから?ねえ!教えてよ!」

愛川の叫びに、中央館に入った中西は足を止め、

「一つだけ教えてやる!」

「え?」

「貴様の事など!蚊ほども思っていない!俺に付きまとうな!」

そして、振り向くと、

「次は殺す!」

鬼の形相で、愛川を睨んだ。

その瞬間、愛川のすべてが止まった。

泣き崩れるのにも…時間がかかった。


「カスが!」

吐き捨てるように言うと、中西は歩き出した。

勿論、九鬼がいるところを目指して…。
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