天空のエトランゼ〜赤の王編〜
九鬼の右足のスネが、神流の首に叩き込まれると同時に、左足で神流の腹を蹴り、離れながら空中で回転した。

「ルナティックキック!三式!」

さらに全身を捻ると、ドリルのように回転し、両手を緑に向けていたカルマを後ろからはね飛ばした。

勢いは止まることなく、そのまま緑の首を締める梨絵の腕を突き破った。

「ぎゃあ!」

残りの腕も消え、悶絶する梨絵を無視し、廊下に着地した九鬼に向かって、優が襲いかかる。

両手に出来た光のリングを、九鬼に向かって投げようとした。

しかし、それよりも速く、九鬼の手から放たれたリングが、優と神流を切り裂いた。

「え!」

優の戦闘服は斬れたが、神流のダイヤモンドのボディは、光のリングを跳ね返した。

「無駄よ!」

鼻で笑おうとしたリオの目の前で、九鬼が舞った。

「月影キック!」

輝く足が、リオの胸に当たると、ダイヤモンドのボディが砕けた。

「ば、馬鹿な!」

驚くリオの頭上…天井ギリギリで回転した九鬼の二発目の蹴りが、再びダイヤモンドのボディに炸裂し、リオをふっ飛ばした。

「大丈夫?」

着地と同時に、緑に声をかけ、高坂に手を伸ばした。

「やはり…君こそ、乙女ブラックに相応しい!」

ふらつきながらも立ち上がった高坂に、九鬼は微笑むと、

「何が起こっているかわかりませんが…この場から逃げて下さい」

緑を見た。

「先輩を頼みます」

「はい!」

緑は、頷いた。


「九鬼真弓!」

リオ達が、九鬼を睨んだ。

「フン!」

九鬼は背中で、高坂と緑を守りながら、 リオ達に向かって、右手を突きだし、指でかかってこいと合図した。

「な、舐めるな!」

一斉に、襲いかかってくるリオ達。

それを迎え撃つ九鬼。

再び戦いが始まる。



「部長!」

窓が外から開き、人間状態に戻った輝が手招きした。

「あんたね」

緑は、高坂に肩を貸そうとしながら、輝を睨んだ。

「待て…」

高坂は、緑の肩を借りる前に、顔をしかめながらもしゃがんだ。

そして、服部の形見となるトンファーを掴んだ。
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