天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「は!」

変身が解けた九鬼の攻撃を、ことごとくかわす中西。

「真弓…」

悲しげな顔を九鬼に向け、

「できれば…お前を傷つけたくない」

「は!」

しかし、九鬼は話を聞かない。

凄まじき猛攻をかけるだけだ。

「真弓…」

だが、所詮人間の動きである。音速を超える乙女ブラックの攻撃に比べると、止まっているも同じだった。

「無駄なことを」

思わず掴んだ九鬼の腕に、少し力を入れるだけで、九鬼の顔に苦悶の表情が浮かんだ。

それを見て、中西は腕を離した。

「脆い体だ。もし…殺してしまったら、また出会うのに、どれだけの時間がかかることか」

「貴様!」

「だが…」

腕を離した瞬間、睨んだ九鬼の腹にカカトを叩き込んだ。

「うぐ!」

くの字に曲がる九鬼の体。

「何もしなければ…言うことをきく相手でもない」

中西の平手打ちが、苦悶の表情を浮かべる九鬼の頬を殴った。

地面を転がる九鬼。

「だから…魂を閉じ込め、記憶を消して書きかえようとしたのだがな」

ゆっくりと、九鬼に近づく中西の死角から、カレンの飛び蹴りが襲いかかってきた。

「どうしたものか?」

首を傾げ悩む中西は、カレンの方をまったく見ないで、腕で蹴りをガードした。

「まったく…いい加減にしろ。今、立て込んでいるんだから」

中西はため息をついた。

九鬼の前に、さやかと緑が立ちふさがった。

「何度…やっても、無駄なことを」

「そうか?」

中西の後ろから、声がした。

「うん?」

振り返ると、後ろに高坂がいた。

「まだ無駄と…決まった訳ではないよ」

その手には、マシンガンが握られていた。

「魔力を使わない武器ならば、どうかな?」

高坂は口許を緩めた。

特別校舎は、哲也達…防衛軍の秘密基地でもあった。

その中に、対魔物用の武器が多数隠されていた。

普段ならば、魔物の属性に合わせて式神でできた弾丸を使うのだが…下等な魔物に使うのは、もったいないとして、単なる鉛の玉を使うこともあった。
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