天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「な、何だ?」

突然、上空が真っ暗になり雷雲が現れた。

そして、雷が落ちた。

「きゃあ!」

その場にいた人間の目には、そうとしか見えなかった。

悲鳴を上げた緑。

逃げることはできないと、覚悟を決めたさやか。

高坂はただ…九鬼とムジカを見つめていた。

雷は、そこに落ちると確信したかのように。


「馬鹿な…」

カレンは、雷の一瞬を見切っていた。

「あり得ない!」

絶叫するカレンの目の前で、雷は消えた。

「そうだ!あり得ない!」

ムジカは九鬼を掴みながら、天を見上げ、睨み付けた。

「お前の攻撃が当たることがな!」

すると、雷雲も消えた。

そして、ムジカを中心に半径三メートル程が無風状態になる。

その外縁に、乱気流が巻き起こり、緑達を吹き飛ばした。

カレンは何とか踏み留まった。しかし、吹き抜けた風が体に傷をつけた。

「噂通り…はた迷惑なやつだ」

カレンは舌打ちした。

「鎌鼬か…」

地面を滑りながら、高坂は切れた頬の感触を指で確かめた。


「愚か者が!」

ムジカは、片手を天に向けた。

しかし、誰もいない。

「いいんだよ」

ムジカの耳元で、声がした。

「な!」

腕に激痛が走り、思わず九鬼を離してしまった。

「!」

九鬼はその隙に、後方にジャンプした。

「き、貴様!」

空中から落下したアルテミアは、槍状のチェンジ・ザ・ハートで、ムジカの腕を叩くと同時に、地面についた左足を支点にして身をよじった。

「え」

鞭のようにしなった右足が、ムジカの口元に叩き込まれた。

ふっ飛んだムジカに、アルテミアは不敵な笑みを向けた。

「お前の能力は、魔力や特殊能力を無効にするだけ。直接的な攻撃には、無力」

槍状のチェンジ・ザ・ハートは、分離すると、どこかに飛んで行った。

「さてと…」

アルテミアは両手を合わし、拳を鳴らすと、ムジカに向かって歩き出した。

「やはり…この体では、レベルが下がるか」

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