天空のエトランゼ〜赤の王編〜
感覚を確かめ、

「でも、ちょうどいい」

嬉しそうに、にやりと笑った。

女神の一撃も、天災と言われる程の威力もなかった。

それなのに、アルテミアは嬉しかった。

懐かしい感覚だった。

(弱いな)

と思ったが、それがよかった。


笑顔を浮かべているアルテミアを見て、九鬼は驚いていた。

前に会った時と、別人のような印象を受けた。

「本当に…アルテミアなのか?」


「ア、ア、アルテミア!?彼女が」

高坂は、思わず息が詰まる驚いてしまった。

「あの勇者…ティアナ・アートウッドと魔王の娘!」

アルテミアの名前は、知っていた。

だけど、そんな有名人に会うことなどなかった。

噂通りの美貌。

そして…。

高坂は、辺りを見回した。

威力は小さかったが、鎌鼬によって、切り裂かれた中庭の木々や、傷だらけになった校舎を見て、自然とため息が出た。

「噂通りの粗暴」


「さあ!やるか」

アルテミアは背伸びをすると、倒れているムジカを指差し、

「いくぞ!モード・チェンジ!」

アルテミアの姿が変わる。

「無駄だ!」

ムジカの目が輝くと、アルテミアの変身が解除される。

「貴様の特殊能力も使え…!?」

言葉の途中で、アルテミアの膝蹴りがムジカの鳩尾に突き刺さった。

「速い!!」

その様子を見ていた九鬼が、驚愕した。

「そ、そんな…馬鹿な」

くの字に曲がった体を戻す暇もなく、密着状態から膝蹴りを、ムジカは顎に喰らった。

「は!」

今度は顎が跳ね上がり、上半身を反らすムジカの胸元を蹴った。

ふっ飛んだムジカは、特別校舎の窓を突き破り、中に消える。

「強い…」

唖然とするさやか。

圧倒的な強さに、息を飲む九鬼達の視線を浴びながら、悠々と特別校舎に向かうアルテミア。

九鬼達の方を見向きもしない。

「美しい…」

その頼もしい姿に、高坂は感嘆のため息をついた。
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