天空のエトランゼ〜赤の王編〜
特別校舎の窓ガラスを突き破り、廊下を転がったムジカは、慌てて立ち上がろうとしたが、長い黒髪を後ろから誰かに踏まれ、立つことができなかった。

「え?」

驚くムジカの首筋に、手刀が刺し込まれた。

爪が皮膚を破ると、手刀を抜いた。そして、鮮血がついた指先を、踏みつけている者が舐めた。

「お前の能力…貰った」

にやりと笑うと、踏みつけていた足を退けた。

「な、何者だ!?」

自由になるとすぐに立ち上がったムジカが、振り向くと…そこにいたのは、美亜だった。

「な!」

絶句するムジカの前から、美亜が消えた。

と同時に、特別校舎の出入口の扉が開き、アルテミアが中に入ってきた。

廊下を真っ直ぐに歩き、ムジカに向かってくる。

「どういうことだ?」

何が起こっているのか、理解できないムジカに対して、アルテミアは口を開いた。

「お前の能力は、相手の魔力を無効にする。しかし、己の力は使える!」

アルテミアの左手にある指輪が輝く。

「つまりだ。貴様の力を頂けば…条件は同じとなる。こちらの能力が、使える」

アルテミアは、指輪を突き出し、

「行け!赤星!お前が、倒すんだ」

ムジカを睨み、叫んだ。

「モード・チェンジ!」

アルテミアの体を光が包んだ。

「うおおおおっ!」

光を突き破ると、中から浩也が飛び出してきた。

「ヒイイ」

悲鳴を上げたムジカの手から、光線が放たれたが、開いた窓から飛んできた2つの物体が弾いた。

そして、その物体を走りながら掴むと、十字架にクロスさせた。

ライトニングソードになったチェンジ・ザ・ハートを横凪ぎに振るった。

雷鳴が廊下に轟き、電流がムジカの体を痺れさせ、動きを奪う。

「そんな馬鹿な…」

「は!」

袈裟斬りに振るったライトニングソードの軌跡が、ムジカの体に走る。

「我はただ…」

「は!」

ライトニングソードが、ムジカの胸を貫いた。

「お前と…」

鮮血が舞う廊下の向こう…出入口から飛び込んで来た九鬼に、ムジカは手を伸ばした。

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