天空のエトランゼ〜赤の王編〜
その時、三日月のような軌道を描いて、空から九鬼が降ってきた。

「ルナティックキック!」

九鬼の回し蹴りが、夏希を掴もうとした化け物の腕を跳ね上げた。

「九鬼!」

夏希が嬉しそうな声を上げた。

九鬼は着地と同時に、前転するかのように前に飛び、地面に手を付けると回転し、化け物の懐に飛び込んだ。

「ルナティックキック二式!」

腕から全身をバネにして、化けものの顎先向ってジャンプすると、両足で蹴り上げた。

反り返る化け物の巨体を見て、元気を取り戻した夏希は新たなる武器を召喚した。

「乙女スタンガン!」

叫びと同時に突き出した青白い光を伴ったスタンガンが、もう一体の化け物に炸裂した。

「え!」
「何!」

夏希と九鬼が、同時に声を上げた。

「効いていない!?」

牛と馬の顔に、人間に似た毛深い体躯をした化け物は、クククッと余裕の含み笑いをもらした。

「ならば!」

九鬼は、右手を前に出すと、全身の力を腰に加えていく。

「夏希!いくぞ」

「わかった!」

九鬼がやろうとしていることに気付いた夏希は、ブルーの乙女ケースを突きだした。

「兵装!」

乙女ケースの形が変わる。

「はあ〜!」

気を練る九鬼の全身に、天から降り注ぐ月の光が、集まってくる。

「乙女青竜刀!」

夏希の手に、やっと武器らしい武器が握られた。

「ルナティックキック!」

九鬼がジャンプした。爪先を突きだし、ドロップキックのような体勢になった九鬼の体が身をよじると、回転しだした。

その全身を、光がさらに渦を巻いて回転すると、爪先に集束していく。

「三式!」

ドリルのようになった九鬼の体が、牛の化けものに突き刺さった。

「くらえ!」

青竜刀の刀身が、月の光を得て輝く。そして、夏希は刀を振り落とすと、斬撃が飛び出し、馬の魔物を直撃した。

「どうだ!これが、月の力よ」

勝利を確信した夏希のそばに、九鬼が転がってきた。

「え?」

目を丸くする夏希。
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