天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「く!」

窓と窓の間の柱に、背中を付けた九鬼の首を挟む形で、柱に突き刺さった。

パープルはにやりと笑った。

広げている腕をしめれば、両方の刃は…九鬼の首を真っ二つにできる。

「か、加奈子なのか…」

九鬼は、目の前にある顔を見つめ、眼鏡の向こうにある目を探った。

「死ね!」

しかし、パープルは質問に答えることなく、ハサミを閉じようとした。


「な、舐めるな!」

九鬼の膝が、パープルの鳩尾に突き刺さった。

「ウグッ!」

無防備だったパープルの体が、跳ね上がる。

その隙に、ハサミの柄を持つと、柱から引っこ抜き、さらに蹴りをパープルに叩き込んだ。

思わずハサミから手を離したパープル。

九鬼はハサミを、窓ガラスの向こうに捨てると、足に力を込めた。

「ルナティックキック!」

まだふらついているパープル向かって、飛んだ。

「こっちこそ!」

パープルは鳩尾を押さえながら、空中に浮かぶ九鬼を睨んだ。

「舐めるな!」

パープルの前に、巨大なアイロンが突如現れた。

熱を帯びた部分が、九鬼に向けられる。

「三式!」

突きだした足の爪先を真っ直ぐにすると、ムーンエナジーを纏った九鬼の体が回転する。

アイロンの表面を突き破ると、パープルの体に突き刺さった。

「な、何…」

ふっ飛んだパープルの腹の辺りの戦闘服に穴が開き、そこを中心にしてひびが走ると、パープルの戦闘服は砕け散った。

廊下には、乙女ブラックの姿をした九鬼と…変身が解けた女子生徒しかいなかった。

九鬼は眼鏡を外すと、変身を解いた。

「加奈子…」

ダメージから、崩れ落ちて、廊下に片膝をつけた…平城山加奈子が、九鬼を見上げていた。

「この強さは、あたしが知っている九鬼ではないな…」

九鬼は加奈子を見つめ、

「あなたは…あたしの知ってる…加奈子のようね」

時空を越えて、巡り合った二人。


なぜここに…加奈子がいるのか。

九鬼は会えた嬉しさよりも、消えた血の匂いとの関係性を考えていた。
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