天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「大丈夫!」

魔物達を瞬殺した理香子は眼鏡を外すと、慌てて九鬼と夏希のもとへと駆け寄った。

「大丈夫」

九鬼達も眼鏡を外すと、学生服に戻った。

「よ、よかった…」

ほっと胸を撫で下ろす理香子を見て、九鬼は微笑んだ。

「だけど、凄いよね!乙女ガーディアンの力!月の女神直属の騎士として、月影最強の力を与えられているんだよね!」

少し興奮気味な夏希が、安堵感もプラスされて、はしゃいでいた。

「そうね…」

九鬼は、自分の乙女ケースを見つめた。

乙女ブラックのレプリカとでもいうべきもの。


「どうしてじゃ?ソナタには与えたはずじゃ…。最強の力を」



「え?」

突然、頭の中に声が響いた。

九鬼は周りを見回したが、理香子と夏希しかしない。

(誰?)

九鬼は心の中で、問いかけたが…もう声はしなかった。


「九鬼!行くわよ」

いつのまにか、夏希と理香子は空き地から出ていた。

「う、うん!」

九鬼は返事をすると、歩き出した。


(最強の力…)

まったく何も身に覚えがなければ…気にもしなかっただろう。

しかし、九鬼には身に覚えがあったのだ。

(あれのことか!)

九鬼は、乙女ケースをぎゅっと握り締めた。

(あのケース!)

しかし、その力は…九鬼の手元にはなかったのだ。
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