天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「ち、ちょっとね」

僕は頭をかいた。

全然誤魔化せていないが、絵里はなぜか…それ以上つっ込まなかった。

「今まで、何してたの?」

笑顔を浮かべながら、訊いてくる絵里。

この数分で、過去の会話した時間を大幅に越えていた。

だけど、喜んでいる場合ではない。

メールを送ってきた依頼者が、もうすぐやって来る。

それに…デレデレしていたら、アルテミアに何て言われるかわからない。

ピアスから声がしないのが逆に、恐ろしい。

僕は、無意識にピアスを指で触れた。

もしかしたら、この世界に来たダメージで、話せないのかもしれない。

そう考えると、心配になってきた。

暗い顔になって、ピアスを触る僕に、絵里は口を開いた。

「立ち話も何だし…どこか、お店に入らない?」

「え」

昔ならば、今の言葉だけで、人生の一大事であるが…そんな場合ではない。

「ご、ごめん!矢崎さん!ちょっと人と待ち合わせしていて…」
「だから…」

慌て出した僕に、絵里は自分の携帯の画面を見せた。

「あなたに、メールを送ったのは、わたしです。赤星浩一君」

僕の目をじっと見つめてから、笑みを見せる絵里の表情に、僕は息を飲んだ。

「君が…」

信じられなかった。

まさか…知り合いから、メールが来るなんて。

あまりのショックで、一瞬何も言えなくなったが、僕ははっとして、気を引き締めた。

「やつらに狙われているんだね」

動揺している場合ではない。

魔物が、彼女をつけてきたかもしれない。

周囲に気を張り巡らそうとした瞬間、

そんな僕に…絵里が言った。

「化け物は…わたし」

「!?」

今…絵里の口から出た言葉が、信じられなかった。

「わたしが…わたしに襲われているの。人間ではなくなる…感覚に」

「や、矢崎さん?」

化け物と自分に対して言った時から、微量だが…人間から感じることはあり得ない力を感じた。

それは、魔力。

「だけど…あなたも」

絵里は、僕を見つめ、

「あなたも同じなんでしょ?」

その言葉に、僕は絶句した。
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