天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「気持ちいいでしょ。男の人はみんな…そう言ったわ」

絵里は微笑んだ。

「矢崎さん…」

僕の意識が飛びそうだ。

歯を食いぼり、必死にたえていた。

矢崎は、僕の頬から指を立てると、ゆっくりと体をなぞっていった。

特に、服が溶け…素肌が露になっている部分は、念入りに触る。

絵里から出る体液は、まるでローションのようであった。

「でもね。あたし…進化なんてしなくて、よかったのに…。人間のままがよかった」

今度は、顔が下がっていく。

「みんな…この匂いで、気持ちよくなっても…はてるとね。もとに戻るみたいなの。正気になった男はみんな…同じ言葉を口にするのよ」

股間の辺りまで下がった顔が、僕を見上げた。

「化け物ってね」

絵里は微笑むと、這っていた指で、学生服のチャックを降ろそうとした。



「――で、その時…。お前は何て言うんだ?」

「え?」

突然、上からした聞き覚えのない女の声がして、絵里はチャックを降ろしかけたまま…顔を上げた。

僕は何も話していなかったが、耳についたピアスから声がしていた。

「化け物と言われて、どうした?」

「な」

ピアスからの声に、絶句する絵里に、さらに言葉を浴びせた。

「教えてやろう?」

ピアスの声が、にやりと笑ったことに、僕は気付いた。

「お前は、殺したんだ。その男達をな」

「違う!」

絵里は立ち上がり、ピアスを睨んだ。

「殺しては…いないから!」

「だったら〜」

声はさらに笑い、核心をついた。

「食べたな!」

「!」

「人間を食べたな!」

「いやああああ!」

絵里は悲鳴に似た絶叫を上げると、ピアスに手を伸ばし取ろうとした。

「赤星!」

ピアスが叫んだ。

「モード・チェンジ!」

ほぼ同時に、僕が叫ぶと、左手の指輪が輝き、光が全身を包んだ。

光は結界となり、絵里の体をふっ飛ばした。

「ビーナス!光臨!」

光が消えると、中からアルテミアが現れた。
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