天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「女同士の方が、美しいですよお〜」

妙に猫なで声を出す桃子の言葉を、背中で聞きながら…里奈は顔をしかめた。

「そうか〜」

「女同士は、女同士で…どろどろしてますよ」

にこにこと答える夏希に、

「あんた…。誰のこと言ってるの?」

里奈が訊いた。

「一般論よ。一般論」

少し誤魔化すようなこたえた夏希を、里奈は横目でちらりと見た後、視線を前に戻した。

「一般論ねえ…」

「そうよ」

夏希は頷いた。



そんな話をしている間に、5人は正門についた。

門の前では、週一回恒例の持ち物検査が行われていた。

教師数人と、数を捌く為に生徒会が駆り出されていた。

まあ…それの方が都合がいいのだけど。

中島は、教師の方に並んだが、あたし達は生徒会の方に向かった。

桃子の手を振りほどくと、あたしは走って列に並んだ。

「理香子様!」

桃子が不満そうに、頬を膨らませたが、無視した。

あたしの後ろに、里奈と夏希…少し他の生徒を挟んで、桃子が並んだ。

「はい!次の方どうぞ」

生徒会の列の中でも、一番てきぱきとこなしている列に並んだ為に、自分の番になるのが早い。

「中を開いてくださいね」

その言葉に、あたしはさっと鞄を開け、中身を見せた。

そこには、プラチナの乙女ケースがあった。

「はい。大丈夫です。次の方、どうぞ」

あたしは、鞄を閉めた。

持ち物検査なんて、楽勝だった。

なぜならば、チェックしているのは…生徒会長九鬼真弓だからだ。

里奈と夏希も、問題なく通れた。

だけど、

「これは、没収します」

桃子だけは通れなかった。

「学校には、必要ありませんから」

九鬼の言葉に、桃子は肩を落とした。

「あたしの盗聴器が…」

何に使うつもりだったのだろうか…。

「理香子様の机に、取り付ける予定だったのに…」


(げ!)

桃子のあり得ない言葉に、あたしの全身に冷や汗が流れた。

(恐ろしい…)

そんな子が、同じ月影だと思うと…あたしは、ぞっとした。
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