天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「ククク…」

楽しそうに含み笑いをするタキシードの男。

大月学園の裏門の側にある用具倉庫の裏まで、テレポートしていた。

放課後になるとさすがに、誰もいない。

「これで…第一段階は、終了だ」

にやりと笑ったタキシードの男の耳に、自分とは違う笑い声が聞こえてきた。

「誰だ!」

タキシードの男は周囲を見回したが、まったく気配がしない。

なのに、笑い声はそばで聞こえていた。

「アハハハハ!」

そして、段々と声が多くなった。

「誰だ!」

タキシードの男の目が、赤く光った瞬間、足下に生えていた野花が燃えた。

「はじめまして…」

炎は一瞬で、人の形をとった。

「デスパラード」

そして、妖しく微笑みかけた。

「き、貴様は!」

タキシードの男の全身が、震え出した。苦々しく、炎から生まれた女を睨み付けた。

「ラ、ライの魔神が!我に何の用だ!」

「クスッ」

女は、軽く笑ってから、

「そうねえ〜」

首を捻った後、

「別に用はないわ」

また笑みを向けた。

「ラ、ライの命で、我の前に来たのか!」

タキシードの男は、完全に怯えていた。それは、目の前に立つ女に対してというよりは…そのバックにいる魔王の存在に対しての怯えであった。

「あらあ」

女は素っ頓狂な声を上げると、また声を出して笑った。

「アハハハハ…。そんなに気になるの?王のことが」

唐突に笑みを止めると、女は探るような目で、タキシードの男を見た。


「き、貴様!」

馬鹿にされていると感じたタキシードの男の姿が、変わった。

九鬼そっくりの姿になり、その身には…黒よりも黒い闇を纏う。

「下らない」

女は腕を組み、指先だけを動かした。

「死ね!」

パンチを繰り出そうとした瞬間、九鬼そっくりの体が燃え上がった。

「ぎゃああ!」

身を包む闇が燃え、その場に崩れ落ちた時、全裸の九鬼が、地面に両手をついていた。

「勘違いしないでほしいわ。王は、知らない。あたしが、あなたに…用があるの」

女は、九鬼の後頭部に足を置くと、そのまま地面に 押し付けた。
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