天空のエトランゼ〜赤の王編〜
そして、九鬼の前から消え去る前に、本音を口にした。

「できれば…妹を巻き込みたくない」

「結城先生…」

「…」

哲也は九鬼に頭を下げると、道から外れ…正門の横にある学生食堂の裏口へと走り去った。


「九鬼!」

去っていった哲也の方を見つめる九鬼に、里奈達が駆け寄ってきた。

「あ、兄貴と、何話してたんだよ」

息を切らしながら、一番最初に駆け寄った里奈が訊いた。

「大したことではないわ」

九鬼は顔を里奈に向けると、微笑みかけた。

「もう闇の組織と関わっていないとは、思うけど…」

里奈は九鬼の手を取り、

「心配なんだよ!また兄貴が、あたしの友達に危険を及ぼすんじゃないのかって!」

ぎゅっと握り締める力の強さに、九鬼は里奈の優しさを見た。

「心配いらないわ。あなたのお兄さんはもう何もしないわよ」

九鬼の言葉に、笑顔になる里奈。

「さあ…帰りましょう」

九鬼はみんなの顔を見て、頷いた。

「う、うん!」

里奈は、九鬼から手を離した。

「それにしても…まだ学校にいたのね」

九鬼の言葉に、里奈は頭をかき、

「なんか〜盛り上がっちゃって!」

「凄い力が、味方に加わったからね」

夏希が、理香子に笑顔を向けた。

「理香子様がいれば〜大丈夫ですわ!」

陶酔の表情を浮かべる桃子。

理香子の顔が、多大なプレッシャーに少し…ひきつっていた。

そんな輪から、少し離れて歩く蒔絵は、携帯をいじっていた。

画面に、乙女シルバーという文字が打ち込まれ、検索にかけたが…何も出てこなかった。
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