天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「中島!」

あたしは、学校の帰り道を1人歩く中島を追いかけていた。

1人で、帰す訳にはいかない。

中島が化け物に拐われようとしたあの日から、あたしは常に一緒に帰るようにしていた。

本当は、人目もあるし、恥ずかしいんだけど…そんなことを気にしてる場合じゃない。

あたしは、中島を守らなくちゃならない。

その為に、乙女ガーディアンになったんだから。

両手で学生鞄の取っ手を握り締めたあたしに、中島が話しかけてきた。

「いつも…ありがとう」

「え…あっ!ええ!…う、うん」

返事をするまでに、妙に時間がかかってしまった。

恥ずかしさの為に、中島の方を見れなかったあたしは、突然のお礼に…思わず顔を向けた。

微笑んでいる中島の顔を見ただけで、真っ赤になった。

「あ、あたしは…中島を守りたいんだ…」

と言ってから、さらに顔を真っ赤にすると、

「べ、別に〜!な、中島がた、頼りないとかじゃなくって!相手が、相手だし…。あたしが、そいつらと戦う力を持っているからで!だから、あたしが戦うわけだから!」

緊張から、妙に言葉をまくし立ててしまった。

そんなあたしの様子を、優しく見守っている中島。

「だから!」

だからが多い。

そんなあたしを見て、中島は笑うと、

「戦う力か」

呟きながら、視線をあたしから外した。

そう言えば、あたしはきちんと…乙女ガーディアンについて、話していなかった。

中島は、九鬼達のことを知っていたから。

「中島!あのねえ!」

「本当は、最初から…話すべきだったのかもしれない」

「だから…あたしは!」

中島とあたしの会話が、すれ違う。それに、気付かないあたし。

「もう…これ以上…誰も苦しまないように…。言わなきゃならなかったんだ!」

突然語尾を強め、中島はあたしを見た。

「!」

あたしは、何も言えなくなった。

今まで、中島が見せたことのない目を向けていたから。

とても、真剣で…恐い目を…していた。

< 360 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop