天空のエトランゼ〜赤の王編〜
タキシードの男は頷き、

「あなたは、紛れもない後継者でございます。しかし!」

その後、声を荒げた。

「この世界では、もう力を得ることはできないでしょう。それに、あなたは命を狙われている!」

「く!」

九鬼は顔を逸らし、目を瞑った。

「それと…もう一つ…ご報告が、ございます。あなたの知り合いである…赤星綾子が殺されました」

「何!?馬鹿な!あり得ない!昨日会った時には…」

中島が、自分の偽物にやられた後…彼を助けに来た綾子と会った。

彼女は去り際に、こう言った。

決着がついた後、自分のもとに来ると。


「あなた様は、3日…意識を失っておりました故…。残念なことに、彼女は…彼女の兄の恋人である…天空の女神アルテミアに、殺されたのです」

「天空の女神…アルテミア」

「はい」

タキシードの男は悲しげに頷くと、次に決定的な嘘を口にした。

「我が主…月の女神は、申しておりました。あなたに化けていたのも…天空の女神ではないかと」

「え?」

「彼女はモード・チェンジなるもので、姿を変えることができます」

タキシードの男は顎に手を当て、

「恐らくは…この世界の月の女神の力を得ている月影が、邪魔だったからと思われます」

深刻そうに言ったが、心の中では笑っていた。

「その女神の目的は!」

九鬼は肩を押さえながら、立ち上がった。

「さあ〜」

タキシードの男は首を捻り、少し考え込んだ。

しばらくして、おもむろに口を開いた。

「しかし…今いるところは…知っております」

「どこだ!どこにいる!」

急かす九鬼に、タキシードの男は頭を下げると、

「ブルーワールドで、ございます」


「ブルーワールド?」

「はい」

タキシードの男は頭を下げたまま、地面に顔を向けて動かない。

それには、理由があった。

顔が、歪んでいたのだ。

笑いを堪えて切れずに…。
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