天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「何ですと!?」

元老院の中にある王宮に、激震が走ったのは…まだ太陽が昇らぬ早朝だった。

有史以前から、魔界と言われる…完全に人が住めない地域から、離れた場所に建築された元老院本部。

その場所は、実世界でいうエジプトに近かった。

海を渡り、ヨーロッパ大陸のギリシャには、十字軍(のちの防衛軍)の本陣が置かれ、魔界よりの侵攻があった場合、盾になるようになっていた。

そして、魔法と政治を司る元老院には、人類を束ねる象徴として…神がお住まいになられていた。

神といっても、人間である。

なぜ人間を神として、崇めまつるのか…。

その理由はいたって、簡単である。

食物連鎖の頂点ではないこの世界の人間は、自らの中に神をつくることで、意識的に…魔物達を否定したのだ。

弱い肉体と大した能力もなく…精神的にも脆弱な人間が、この過酷な世界で、プライドを保っていく為には、自らが…世界の支配者だと思い込まなければならなかったのだ。

例え…偽りでも。

「人神で在らせられるシャーウッド様が、お亡くなりなるとは…」

「この時期の崩御は、民衆の志気を下げる!」

大理石で造られた回廊を歩く2人の神官。

彼らは、王宮に向かっていた。

四国ぐらいの大きさがある元老院は、宇宙からもその姿が見えた。

実際は、外観の殆どが壁の形をした結界である。

もしもの時を考え、他の地域の人間が絶滅した場合、再び繁栄する為の最低限の人類が、その中に住まわされていた。

中央の王宮を中心にして、円が外に住むほど…身分が違うといわれていた。

実際、多くの人々は…もしもの為のモルモットであった。

元老院内に住む人間の数は、一定数が決まっており…中の人間が死んだ場合のみ、外から新たに人員を補助されていた。

新しい人間が生まれた場合は、年寄りから排除されていたが…そのことは、催眠術や魔法を使い、自然死ですまされていた。


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