天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「人類は、素晴らしい力を手に入れた!もう魔王も恐れることはない!」

大佐と呼ばれていた男は、十字軍の兵士達に両脇を抱えられながら、司令室から連行された。

ゲイルは、モニター近くにある…彼が落とした赤いボタンを見つめながら、フッと笑った。

実世界では、このボタンを押す勇気のあるものはいない。

「ゲイル殿!」

兵士の1人が、ゲイルのそばで敬礼した。

「彼は…設定を間違えたようだ。まさか…魔界とはまったく違う場所に落ちるとは…」

ゲイルは胸で十字を切り、犠牲者の冥福を祈った。

「わかっております!今回は、事故であると」

兵士の言葉に、ゲイルは頷いた。

「その通り…事故ですよ。とても悲しい事故です」

大佐と呼ばれた男と入れ違いように、1人の男が入ってきた。 数多くの勲章をつけ、白い顎髭が凛々しい男は、ゲイルに微笑んだ。

その男を見て、兵士は最敬礼した。

男は手を上げると、兵士に出ていくように促した。

「失礼します」

兵士が出ていくと、司令室の中は男とゲイルだけになる。

「上手くいきましたな。核の実験データが取れましたよ。どれ程の破壊力があるのかと」

男はにやりと笑った。

「しかし、データを取る為とはいえ…多くの人間を殺してしまった。民衆から、批判が出ることになるでしょうな」

ゲイルは、赤いボタンから男に視線を変えた。

「それに関しては、問題はありませんよ。核使用後の最大の問題である放射能も、魔神達が迅速に処理した為に、周りに広がっておりません。爆心地は、例の移民の子孫達が住んでる地域ですから」

魔王に破壊された元老院本部の土地には、かつて原住民が住んでいた。 しかし、王宮を立てる為といって追い出したのだ。

彼らは数百年近く、追い出された土地から海を隔てた場所に、国に近いコミュニティーをつくっていた。

いつかは、生まれ故郷に戻る為に。


しかし、それにより新たな問題が発生した。

彼らが根を下ろした土地の周りに住んでいた…人々との小競り合いである。

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