天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「結局…生き残ったか」
入口の町を出て、次の行き先もなく、ふらついていたグレン・アンダーソンは、地球が泣いている声に気付き、足を止めた。
「何だ?」
地面から微かに伝わる揺れよりも、目に映ったおぞましいきのこ雲に、言い知れね恐怖を覚えた。
「あ、あれは…」
震える手を握り締めたグレンには、その恐怖の存在が魔物とは違い…人間の悪意のように思えた。
「ま、また…人間は、やってしまったのか?」
グレンは震える拳を握り締め、目の前に持ってくると、それで自分の頬を殴り付けた。
「落ち着け!」
恐怖を拭おうと、何度か殴っていると、魔物の大群が頭上を通り過ぎていた。
「や、やはりか」
魔物の大群が地上に落とす影に気付き、グレンは空を見上げた。
(お兄ちゃん)
目を見開いたグレンの目には、もう魔物の群れは映っていなかった。
悲しげに微笑む少女が、グレンを見つめていた。
(もう…疲れたの…)
(リタ!)
手を伸ばすグレンとリタと呼ばれた女の間に、紫の翼を持った魔神が立ち塞がった。
(どけ!)
グレンが、横凪ぎに振るった剣を指先で掴んだ。
(妹さんの願いだ。お前は殺さないでほしいと…な!)
魔神が唇の端を歪めた瞬間、グレンの肩から胸にかけて痛みが走り、鮮血が飛び散った。
(しかし)
崩れ落ちるグレンの目に、翼を翻す魔神と連れて行かれるリタの姿が映る。
(もっとも…彼女が、人間じゃなくなれば…どうなりますかね?)
クククと笑いながら、魔神はグレンの前から消えた。
妹とともに…。
「ク、クソ!」
グレンは、視界を邪魔していた涙を拭うと、きのこ雲と魔物達に背を向けて歩き出した。
(俺は…)
グレンは、前方を睨んだ。
(人間を憎んでいる!)
目の前には、聳え立つ十字軍の建物があった。
(だが…俺も人間だ)
矛盾する思い。傭兵として生きるグレンは、人間を憎む気持ちと…同情のような気持ちもあった。
そこに共通するのは、弱さだった。
入口の町を出て、次の行き先もなく、ふらついていたグレン・アンダーソンは、地球が泣いている声に気付き、足を止めた。
「何だ?」
地面から微かに伝わる揺れよりも、目に映ったおぞましいきのこ雲に、言い知れね恐怖を覚えた。
「あ、あれは…」
震える手を握り締めたグレンには、その恐怖の存在が魔物とは違い…人間の悪意のように思えた。
「ま、また…人間は、やってしまったのか?」
グレンは震える拳を握り締め、目の前に持ってくると、それで自分の頬を殴り付けた。
「落ち着け!」
恐怖を拭おうと、何度か殴っていると、魔物の大群が頭上を通り過ぎていた。
「や、やはりか」
魔物の大群が地上に落とす影に気付き、グレンは空を見上げた。
(お兄ちゃん)
目を見開いたグレンの目には、もう魔物の群れは映っていなかった。
悲しげに微笑む少女が、グレンを見つめていた。
(もう…疲れたの…)
(リタ!)
手を伸ばすグレンとリタと呼ばれた女の間に、紫の翼を持った魔神が立ち塞がった。
(どけ!)
グレンが、横凪ぎに振るった剣を指先で掴んだ。
(妹さんの願いだ。お前は殺さないでほしいと…な!)
魔神が唇の端を歪めた瞬間、グレンの肩から胸にかけて痛みが走り、鮮血が飛び散った。
(しかし)
崩れ落ちるグレンの目に、翼を翻す魔神と連れて行かれるリタの姿が映る。
(もっとも…彼女が、人間じゃなくなれば…どうなりますかね?)
クククと笑いながら、魔神はグレンの前から消えた。
妹とともに…。
「ク、クソ!」
グレンは、視界を邪魔していた涙を拭うと、きのこ雲と魔物達に背を向けて歩き出した。
(俺は…)
グレンは、前方を睨んだ。
(人間を憎んでいる!)
目の前には、聳え立つ十字軍の建物があった。
(だが…俺も人間だ)
矛盾する思い。傭兵として生きるグレンは、人間を憎む気持ちと…同情のような気持ちもあった。
そこに共通するのは、弱さだった。