天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「ク、クソ!」

ティアナは、ブラックカードを取り出した。 しかし、魔力は残っていない。

「せめて…体力が、回復できたら」

虚しくカードを見つめていると突然、横合いから指先で摘まれた。

「え?」

抵抗する力もなく、簡単に盗られたカード。

「お待たせしました」

ティアナが盗った相手を見上げる間もなく、新しいカードが手に差し込まれた。

「新型です。旧タイプのように、一度蓄えた魔力をチャージするのに、わざわざ研究所に戻る必要もありません。なくなれば、その場で補充できます」

「ランマク!」

カードを自分に渡した人物が、誰なのかわかると、ティアナの顔に笑顔が戻った。

「そう呼ぶのは、あなただけですよ」

女のように端正な顔をしたラン・マックフィールドは、ため息をつき、

「今は、そのことで…注意している暇もありません。いきますよ」

前を睨んだ 。

「彼1人に、戦わす訳にはいきませんから…って、あら?」

そんな話をしている間に、クラークが風を纏いながら、ランの横を通り過ぎた。

「2人になりましたか」

ランは、頭をかき、

「じゃあ〜行きますか?」

にやりと笑った。

「これでも、学業だけでなく…実技も、トップクラスだったんですよ」

ティアナを見下ろし、

「あなたが、来なくなってからはね」

口元を緩めた。

「ランマク…」

ティアナは、力強く感じられるようになったランの背中を見つめた。

「やれやれ…」

ランの腕に巻き付いていた鞭が、一振りで音速を越えた。

一番近くにいた魔物にヒットして、顔面を切り裂いた。

「あとで、じっくり話し合いましょう」

そのまま横に腕を振ると、一直線に並んで進軍していた魔物達の首を切り裂いていく。

「!?」

ジャスティンは、目の前の魔物達から血が噴き出したことに驚いた。

思わず、足を止めた。

「何!?」

一瞬だけだが、日光に反射した鞭を見ることができた。

自分を避けて、その前にいる魔物に攻撃を当てることは、神業だった。



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