天空のエトランゼ〜赤の王編〜
ちらっと後ろを見ると、ティアナのそばに立つ白衣の男が、鞭を振るっているのが見えた。

「誰だ?」

距離もあるのに、その正確な攻撃に、只者ではないオーラを感じていた。

「舐めるな!」

隊列の後ろにいた…明らかに他の魔物とは違う魔神が、前に飛び出してきた。

サーベルを突きだすと、ランの振るう鞭を絡めとった。

「いつまでも、こんな攻撃が通用すると思うな」

鮫に似たざらついた肌を持つ魔神が、せせら笑った。

「同感だよ」

鮫肌の魔神の耳元で、声がした。

「クラーク!」

ジャスティンは思わず、叫んだ。

風の魔力で、走るスピードを一気に上げたクラークが、魔神の横を通り過ぎた。

その手には、仕込みドスが握られていた。

仕込みドスは、魔神を斬ってはいなかった。そのそばにある影を切ったのだ。

「な!」

驚く暇もなく、魔神の体は真っ二つになった。

「おのれ!」

群に飛び込んだ形になったクラークに、魔物達が一斉に襲いかかる。

仕込みドスを使って、影を切り裂いていったが、魔物達が接近し過ぎると、影と影が重なってしまった。

影切りの条件の一つに、重なった影は切れないがあった。

その為、段々と影切りが使えなくなってきた。

「クラーク!」

魔物の群を飛び越えて、ジャスティンがクラークの後ろに着地した。

「遅いぞ」

クラークは笑った。

「そう言うなよ」

ジャスティンも笑った。

2人は、互いに背中を任せながら、戦うことにした。

「は!」

風と火の魔法を使うクラークに、ジャスティンは蹴りを魔物に叩き込みながらきいた。

「魔法を使えるのか?」

「ああ」

クラークは頷いた。風の魔法で、前にいる魔物達をばらばらに押し避けると、影切りを発動させた。

「ティアナさんの知り合いに、カードをもらった」

「な、何!?」

必要以上に驚くジャスティンに、クラークは苦笑した。

「お前はいらないだろ?」

「戦いが終わった後の体力補充に、使う!」

ジャスティンは、魔物に回し蹴りを喰らわした。

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