天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「この痛みとともに」

握りしめている拳の間から、地面に血が流れ落ちた。

ティアナは敢えて、押し返すことはしなかった。

ライトニングソードを離すと、ポセイドンは倒れている魔物達に向かって叫んだ。

「全軍撤退!」

そして、ゆっくりと歩き出した。

ティアナの横をすれ違う時、ポセイドンは最後の言葉を伝えた。

「また会おうぞ。ティアナ・アートウッド!強き武人よ」



「は、は!」

痺れている魔物達も何とか立ち上がると、もうジャスティンとクラークに見向きもしなくなった。

去っていく魔物達を、目で見送りながら、クラークは呟いた。

「勝ったのか?」

「いや…」

ジャスティンはそばで、首を横に振った。

「勝たしてくれたのさ」




「何とか…退けましたね」

「そうだな」

ランの言葉に、海の中に消えていくポセイドンの背中を見送りながら、ティアナはこたえた。

「しかし…これからが、大変ですよ」

ランは肩をすくめた後、

「人間にとっての最悪の状況が、変わった訳ではありませんから」

カードを見つめ、

「その状況を打開する光は、あまりにも小さい」

「そうだな」

ティアナは視線を、ポセイドンからジャスティン達に変えた。 何かを言い合っている2人を見ていると、自然と笑みがこぼれた。

「聞いてますか?アートウッド?」

ランは、カードを広める方法を模索しながら、話を続けていた。

「制作は任せるよ。ランマク」

ティアナは笑い、ジャスティン達の方に歩き出した。

「アートウッド!何度言ったらわかるんだ。ランマクと呼ぶな!」

「だったら、あたしもティアナでいいよ。ランマク」

何度もいうティアナに、さすがのランも頭をきた。

「どうやら…あなたとは、先にその件に関して、話して合うべきですね」

ぎろっと、ティアナの後ろ姿を睨んだが…戦い終わった戦場で、笑顔を向け合う3人を見ていると…ランは、深くため息をついた。

「やれやれ…。まあ、たまにはいいですか…。そう呼ばれるのも」
< 514 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop