天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「さて〜いこうかしら」

ティアナは、ジャスティンとクラークと無事を喜んだ後、後ろに聳える十字軍本部を見た。

半壊したとはいえ、まだ形を残していた。

恐らくは…反撃する力として、あれが残っているはずだった。

核兵器が。

歩き出すティアナを、ジャスティンが声をかけた。

「先輩?」

「止めないといけないわ」

半壊した本部を軽く睨んだティアナ。口では説明できないが、何か異様な気が漂っているように思えた。

「魔法が使えなくなったんですから…。その…核兵器でしたっけ?それも、使うことはできないのではないですか?」

「だと…いいがな」

ジャスティンの隣にいたクラークが、ぽつりと…呟くように言った。

「残念なことを、お知らせしましょう」

3人から、少し離れたところに立つランが、口を開いた。

「核兵器に、魔力は使われていません。純粋なる科学のみで、作られています。故に、今も発射できますよ。それに〜」

ランは肩をすくめ、

「今なら…言い訳もできる。撃つ理由がある。本部を破壊されたのです。その報復としてね」

「!」

ジャスティンは、目を見開いた。

「だから…いつ発射されてもおかしくない」

「馬鹿な!さっき撃ったのは、まったく魔物がいないところに落ちたんだろ!そんな狂っているシステムで、次もどこに落ちるかわからない!」

ジャスティンの言葉に、ランは頭をかき、

「だから…今、プログラムの調整をやっていると思いますよ」

後ろの本部に振り返った。

「ランマク」

ティアナが、ランの横に止まった。

「何です?」

少しいらっときたが、ランは堪えて、聞き返した。

「本部は、撃つと思うか?」

ティアナの言葉に、

「多分…。なぜならば、魔法を使えなくなっても、人間には攻撃する力があると、人々にアピールできる。それに、先程の失敗を帳消しにできますよ」

「――それは、ちゃんと魔界に飛んだらな」

ティアナはフッと笑った。

「!?」

ティアナの笑みに、ランは眉を潜めた。
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