天空のエトランゼ〜赤の王編〜
ちっぽけな世界。

だけど、そこがあたしのすべてだった。

特区でいわれる特別な地域で育ったリタ・マーラーは、守られた籠の中ですくすくと成長した。

人並みに、恋もした。

そんなリタが、人の悪意に出会ったのは、外の世界に出てからだった。

確かに、学校内でもいじめなどはあった。

それに家に帰った時、たまに祖父の口から…外の人間との衝突を聞いたこともあった。

だけど、すべてが…実感のない話だった。

「じゃがな!我々にも誇りがある!すべての人間が敬う存在であられる人神様は、我々の中から誕生なさったのじゃ!」

特区の中の誰もが、知らない。

人神は単なる…人形と変わらないことを…。

外の世界で、仕事をしている兄が、あたしにだけそう教えてくれた。

だけど、そんなすべてが…あたしには、関係ことだと思っていた。

なのに…。

この世で、一番悲しいことは…人間扱いされないことだ。

人間に、違いがあるなんて。


同じ特区の出身の女の人が、あたしに言った。

「女じゃなくて〜雌になればいいのよ」

煙草に似たものを吸いながら、あたしに言った。

「だったら〜差別はないわよ」

にやりと笑い、

「だって〜。やることなんて…同じだから」

楽しそうに言った。

だけど、それが嘘だとわかっていた。

誰が、そんな風に同じで扱われたいものか。

数ヶ月…。そう語った女の人は、町の隙間で死んでいた。

そんな末路を、籠の世界では教えてくれなかった。

「それでも、強く生きろ」

同じくあたしと違う種類の人間が、言った。

その人は、他よりも強くなることで、自分を示そうとしていた。

そんな強さは…あたしになかった。

だから…今度、生まれ変われたら…。

あたしは、強くなりたい。

強く。


それが、リタ・マーラーという人間の最後の思いとなった。




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