天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「こ、これは!?」

血が残る玉座の間からいなくなったアスカを探す為に気を探ったライは、すぐに感じることができた。

だから、急いでアスカのそばに向かったライは…絶句した。

そこにいたのは、アスカではなく…フレアだったからだ。

(姉は…輪廻に似て、妹は…)

ライは、突然現れた自分を見て、跪くフレアを見て…フッと笑った。

(それも…ありか)

アスカは、フレアの炎の中にいる。もう彼女の意識も、記憶も感情もない。

なのに、そこに幸せと自由を感じた。

「邪魔したな」

ライはそのまま…フレアの前から消えた。



「お呼びでございますか?」

玉座の間に戻ると、ライはラルを呼んだ。

玉座に座るライの前で控えるラルを見て、すべてを悟った。

この魔神は、自分のことを思ってやったのだ。

ライの心を、惑わすものを排除しただけなのだ。

そう…そのような行動を取るように、創ったのだ。

ライ自身が。

だから、責めることはしない。

「ラルよ」

「はい」

ライの言葉に、深々と頭を下げた。覚悟はできていた。

しかし、ライはラルにとって…意外な言葉を口にした。

「これからも…我の為に励め」

ラルは、目を見開き…驚いたが、

「は!」

すぐに返事した。

「それだけだ。下がってよい」

ライの言葉に、再び頭を下げると、ラルは玉座の間から消えた。

「…」

ライは、目を瞑った。

そして、思考を停止した。

何も感じないこと。

それこそが、王としての休息だった。

それくらいしか…安らぎを感じる時はなかった。

だが…今日は、少しの寂しさを感じていた。

隣にいない寂しさを。
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