天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「だな…」
男は火のついた煙草をくわえながら、カウンターの上にあるものを置いた。
それは、革の楽器ケース。
「こいつを預かってくれ…。行かなくちゃならないところができた」
煙草を灰皿に置くと、グラスに手を伸ばした。
女は新しい煙草を吸おうか悩んだが、やめた。
自分を見つめる男の目から、少し顔を逸らすと、
「そこは…帰って来れる場所なの?」
呟くように訊いた。
「ああ…多分な」
男は曖昧な返事をすると、グラスの中身を一気に飲み干した。
そして、立ち上がると、女に微笑んだ。
「それまで…待っててくれ。景子」
「…」
女はこたえない。ただ…カウンターにある楽器ケースに目を落とした。
そんな女を優しく見つめると、男はカウンターから、左横にあるステージに目を向けた。
魔力が使えなくなってから、ステージに明かりがつくことはない。
「必ず戻ってくる」
男は頷くと、カウンターに背を向けた。
歩き出す男の手には、鞘におさまった日本刀があった。
9人の勇者からなるギルド…ブレイクショットの1人。黒の疾風こと――阿部剣司。
彼が向かう場所は、新たな女神が生まれる場所。
しかし、彼の目的は、女神ではない。
ブレイクショットの同士である…青の楔ことグレン・アンダーソンの真意を確かめること。
「待ってるわ。剣司。あたしはずっと…ここで」
景子の言葉に、剣司は一度だけ足を止めたが、振り返ることなく…店の扉を開けると、夜の光の中に消えていった。
その様子を見つめながら、景子は平然と…カウンターの中で立ち続けた。
流れた涙にも気付かずに、ただ…いつものように気丈でいようと、彼が帰って来るまではそうしょうと…それだけを言い聞かせながら、立っていた。
男は火のついた煙草をくわえながら、カウンターの上にあるものを置いた。
それは、革の楽器ケース。
「こいつを預かってくれ…。行かなくちゃならないところができた」
煙草を灰皿に置くと、グラスに手を伸ばした。
女は新しい煙草を吸おうか悩んだが、やめた。
自分を見つめる男の目から、少し顔を逸らすと、
「そこは…帰って来れる場所なの?」
呟くように訊いた。
「ああ…多分な」
男は曖昧な返事をすると、グラスの中身を一気に飲み干した。
そして、立ち上がると、女に微笑んだ。
「それまで…待っててくれ。景子」
「…」
女はこたえない。ただ…カウンターにある楽器ケースに目を落とした。
そんな女を優しく見つめると、男はカウンターから、左横にあるステージに目を向けた。
魔力が使えなくなってから、ステージに明かりがつくことはない。
「必ず戻ってくる」
男は頷くと、カウンターに背を向けた。
歩き出す男の手には、鞘におさまった日本刀があった。
9人の勇者からなるギルド…ブレイクショットの1人。黒の疾風こと――阿部剣司。
彼が向かう場所は、新たな女神が生まれる場所。
しかし、彼の目的は、女神ではない。
ブレイクショットの同士である…青の楔ことグレン・アンダーソンの真意を確かめること。
「待ってるわ。剣司。あたしはずっと…ここで」
景子の言葉に、剣司は一度だけ足を止めたが、振り返ることなく…店の扉を開けると、夜の光の中に消えていった。
その様子を見つめながら、景子は平然と…カウンターの中で立ち続けた。
流れた涙にも気付かずに、ただ…いつものように気丈でいようと、彼が帰って来るまではそうしょうと…それだけを言い聞かせながら、立っていた。