天空のエトランゼ〜赤の王編〜
(化け物だな…)

グレイは納得した。

なぜ…元老院のトップが、彼女を気にしているのかを。

(これほどまでの強さと、天才的な頭脳…)

ティアナは振り返り、気を失った男を見下ろした。

(そして…この美貌だ)

彫りの深く顔は、横顔の方が際立つ。

ティアナは、そんなグレイの思考を知ってか知らずか…にこっと微笑みかけた。

「あなたの知り合い?」

「!」

グレイは我に返り、ティアナから目を逸らすように、倒れている男を見下ろし、

「ああ…」

頷いた。

「知り合いに、命を狙われる理由などあるの?」

「さあね〜」

グレイは軽く肩をすくめ、

「知り合いといっても、こいつとは同じギルドの仲間であっただけで…親しくはないよ」

グレイは鞘から剣を抜くと、男に突き刺そうとした。

「どうして、殺す?」

グレイの剣を、ライトニングソードが止めた。

「先に仕掛けたのは、こいつだ。殺されても、文句はあるまいて」

「理由を訊かないの?あなたを狙う理由を」

「別に…いいさ!」

グレイは力を込めて、ライトニングソードを押し返すと、剣を回して下に向けた。

「!」

その瞬間、男が目を覚ました。殺気を感じて、横に転がった。

「剣司!」

その動きを目にしたグレイは、地面に突き刺さった剣をそのまま横に払った。

半円を描く軌道が、男の脇腹を斬り裂いた。

「どういうこと?」

ティアナは、争い出した2人に呆れた。

男は斬られながらも、日本刀を拾うと鞘に納めた。

抜刀の構えに入る。

「やれるか!」

グレイは突きの体勢で、突っ込んできた。


「やめなさい!」

2人の間に、ティアナが飛び込んできた。

右手で、日本刀の柄を掴み、ライトニングソードの刀身で、突きを受け止めた。

「あなた達の争う理由を教えて!」

ティアナに押さえられて、びくともしなくなった2人は全身の力を込めた後、諦めて…剣を持つ手を緩めた。
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